修学旅行一日目-昼- (姫×主)


修学旅行が始まった
1日目の団体行動
まどかはクラス単位で行動するのにうんざりしながら、全クラスが集合するたびにの姿を探していた
学校生活の一大イベントである修学旅行
この機会に、一気にとのキョリをつめる
それがまどかの旅行中の目標であり、目的の全てだった

「あーもぉ、こんな寺なんか小学校の時に何回も来たわ
 ええから早う自由時間にしてーやー」
ガイドの話を聞きながら、もうすでに別の場所に出発してしまったのクラスのことを思う
こういう時、どうして同じクラスじゃないのかとつくづく嫌になる
体育祭にしても、文化祭にしても、この修学旅行にしてもそうだ
行事というのは男女が仲良くなる絶好のチャンス
なのに、クラスが違ってしまえば それだけでかなりの不利で
かなり損した気分になる
だいたい今日は朝からと一言も会話していない
こんなんなら、普通に授業をしている方がまだと接触があるってもんだ
今ごろは、バスに乗って次の目的地へ向かっているころか
早くホテルに行きたいものだ
そうしたら、の部屋に遊びに行くのに

ガイドに連れられてぞろぞろと、まどかにはなじみ深い寺を周り、
一行はようやく次の目的地へ向かうべく駐車場へと向かった
そこに、わらわらと生徒がいるのを見て あれ? と
まどかの他、担任も首をかしげた
「氷室先生?
 まだ出発していないんですか?」
「バスがエンジントラブルを起こしたらしくて、修理待ちです」
のクラスの担任の氷室が、苦々し気に言ったのが聞こえた
と、いうことはだ
はまだこの駐車場にいるということか
(ラッキー、なんや知らんけどもしかして一緒に行けるんちゃうんか?)
トラブルではあったが、まどかには大変都合が良かった
氷室のクラスは予定が大幅に遅れてしまい、
達は駐車場でとりあえず何をするでもなく写真を撮ったり喋ったりして時間をつぶしている
の、姿を探した
少しでも、顔を見て話がしたかった

一方は最悪の気分でいた
簡単な話、車酔いなのだが
本人にとっては大問題で、
バスでの移動が多い この団体行動は地獄に近かった
今も、バスなんか一生動かなければいいと思いながら側の花壇に座ってボンヤリしていた
(もぉ・・・気分悪いよぉ・・・・・)
溜め息をつく
楽しみにしていた修学旅行だけれど、これだけバス酔いしたら楽しむどころのさわぎではない
今は一刻も早くホテルに帰りたい、と
また溜め息をついた
こんなのは、ちっとも楽しくない
第一、クラスにはまどかもいないから

ウロウロと、駐車場を歩きながら まどかはようやく隅の方の花壇にをみつけた
っ」
呼び掛けて走り寄ると、座り込んでいて どうも顔色がよくない気がした
表情も浮かない
楽しくないのだろうか
せっかくの旅行なのに
「なんや、どーした?
 調子悪いんか?」
の前にしゃがみ込んで顔を覗き込むと、は力なく笑って
そんなことないよ、と
それだけ言った
「疲れたんか?」
「ううん、大丈夫」
「そーか? 熱は・・・・ないしな・・・」
ス・・・、と
急に額に触れられて は顔を真っ赤にさせた
「大丈夫だよっ、ちょっと待ちくたびれただけだから」
何の躊躇もなく触れられて、ドキドキしている
こういうこと、まどかは平気でするけれど
好きな人にこんな風にされたら心臓が壊れそうなくらいにびっくりするのに
それでなくても、すぐに顔が赤くなるのに
「大丈夫」
にこっと、笑ってみせたら まどかは少しだけ安心したような顔になった
「大丈夫なんやったらええねんけどな
 今夜な、ホテル帰ったら肝試しやるねんけど も来ーへん?」
「え・・・・・」
にやっと、意地の悪い顔をしてみせたまどかに はぶんぶんと首を振る
せっかくの修学旅行だから そういうのは楽しそうだけれど
「なんや心霊スポットがあるらしいで〜」
出るって、アレが、と
手を顔の前でプラプラさせたまどかを はねめつけた
「私が苦手だって知ってるでしょ〜」
それでケタケタとまどかは笑って、冗談や、と
いつもの明るい顔で言った
「肝試しとかって定番やん〜
 やっぱやっとかなアカンやろって色んなクラスの奴誘ってんねんけどな
 心霊スポットは冗談やから、散歩や思うて来てみーや」
「う・・・ん、考えとく・・・」
「うんうん、考えときー」
それで、まどかが立ち上がり 遠くで集合の笛が鳴った
「お、行くみたいやな」
まだ座り込んでいるに、手を差し出す
戸惑いながらも、その手を取ると ぐいっとひっぱられた
「ほら、いくで」
「うん・・・」
なんとなく、手をつなぐ形になってバスのところまで行く
側まで行くとエンジンの匂いが不快で は思わず顔をしかめた
(やだなぁ・・・)
せっかく休憩して、まどかと話せて気分が良くなっていたのに
バスに乗ったらまた気分が悪くなりそうで
小さく溜め息をついたに、まどかがああ、と
何か納得したような顔をした
「姫条、お前は向こうだ
 、早く乗りなさい」
氷室にせかされ、の手を放して、まどかは自分のバスに乗り込んだ
そうか、
のあの浮かない顔はバス酔いか何かか
狭いバスに30人も乗って、がたごと揺らされたら そりゃ気分も悪くなるだろう
いやいやバスに乗っていったを思ってまどかは苦笑した
(おんなじバスやったら酔ってる隙もないくらい楽しませてやんのになぁ)
それで、自分の席に置いてあった鞄の中からガムをつかみ出すと の乗ったバス側の友達の席の窓を開けた
隣同志に止めてあるバス
窓の向こうにが見える
窓から身を乗り出してコンコン、と
の窓を叩いた
「姫条くん?!」
驚いた顔で、が窓をあける
「これやるわ、
 ガム噛んでたらちょっとは酔うのマシになんねんで」
にっ、と笑ってまどかは封の開いた食べかけのガムをに手渡し
驚いた顔で受け取ったの頬に手を触れた
「え・・・・っ」
途端にの顔が赤くなる
「酔わへんおまじないや」
その不敵な顔に、またしても
心臓がどきどきして、どうにかなる気がした
途端に気分の悪かったのが、飛んでいくような そんな気までした
「姫条っ
 何をしている、危ないだろうっ」
「姫条くんっ、自分の席に戻りなさいっ」
氷室と、自分の担任の両方に怒鳴られ
オロオロと困った顔をしたに まどかはもう一度にっと笑った
「んじゃホテルでな、
そうして、まどかは窓から身体をひっこめて、
占領していた友達の席を明け渡し自分の席へと戻った
も、氷室にいわれて窓を閉め
手の中に残った、ガムを見つめた
ピーチ味の新発売のガム
2.3なくなっているのはまどかが旅行中に食べたからか
ひとつ取り出して、口に入れた
甘酸っぱい味が、胸にすっとした
まだ胸が、どきどきしている

それから、はバスには酔わなかった
ガムが効いたのか、おまじないが効いたのか
それはわからなかったけれど、今でもまだ触れられた頬に彼の手の感触がする気がする
頬を染めて、修学旅行1日目
団体行動が終わる


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