後夜祭 (姫×主)


文化祭が終わった
生徒達は片付けに出た木材を校庭に運び出していく
それを委員がいくつかの山に組み上げて
秋の夜、ある意味文化祭よりも盛り上がる後夜祭がはじまる

音楽が鳴り響き、先生と委員の監視の元、ゴミの木材に火がつけられた
「やっぱこれがないとなーーー!!」
ごうごうと、勢いよく燃え上がった炎に まどかは心を踊らせる
音楽に合わせて、生徒達が踊り出す
調子に乗って火を飛び越える運動部の男子がいたり、
お目当ての子を探してウロウロする子がいたりする
そんな中、まどかはまっすぐにのクラスへと歩いていった
今日はと踊る
朝からそればっかり考えていたのだ
とはクラスが違うから、文化祭といってもたいして接触もなく盛り上がらない
加えて演劇部の公演で嫉妬させられた
これはもう、最後の後夜祭くらいはを一人占めしなくては気がすまない
そういう気合いで、とりあえずをゲットすべく
まどかは何人かの女の子からの誘いを断った
「ごめんな〜他に踊りたい子おんねん〜」

は真ん中あたりのファイヤーを囲んでいた
側にいる友達と何やら話している
その周りに、を誘いたい男どもがいるのに気づいていない
そいつらに、取られる前に、と
、と
呼び掛けようとした時、の側にいた男がに声をかけたのが見えた
さん、踊ろうよ」
軟弱系美形の男
いうなれば葉月や三原みたいなタイプ
まどかから見たら、そんな男のどこがええねん、ってなタイプ
それが今まさにを誘っている
「え・・・・・?」
「踊ろうよ」
笑顔で、その男がの手を取って
突然のことに が顔を赤くしてその男を見上げた
それがまどかには、大変気に入らなかった

「ちょーまて、はオレと踊るんや」

やっとこさ、人込みを抜けの元まで辿り着いて
まどかはニッと笑った
、踊るで」
「え・・・?!」
男が掴んでいたの手を、強引に奪い取った
そして、ポカンとしているそいつに向かってニッコリと
「今日はは貸しきりや
 順番待っても無駄やからな」
そして、さっさと踊りの輪の中にをひっぱっていった
の、意思も聞かずに

側に火の熱を感じながら、まどかはくるくるとと踊った
見下ろすと、は顔を赤くしながら たどたどしいながらもまどかについて踊っている
、怒ってへん?」
「え・・・え?」
ステップに夢中だったのだろうか
が、驚いて顔を上げ、その途端にヨロヨロとふらついた
「怒ってへん? 無理矢理オレと踊らして」
笑いながら、ふらついたの身体を支えつつ、
まどかはの顔を伺った
どうにもこうにも、
あんな男がいなければ、ちゃんと誘って踊るつもりだったのに
とっさに貸しきりだなんて言って、奪ってきてしまった
よく考えたら、が気を悪くしていてもおかしくない
自分としては、誘いたくても誘えなかった男がたくさんいるを独占できて、優越感たっぷりなのだけれど
「怒ってへん?」
「うん・・・・」
顔を覗き込んだまどかに、恥ずかしそうにはうつむいて小さくうなずいた
「オレと踊んの嫌ちゃう?」
「うん・・・・・嫌じゃないよ・・・」
また、がよろめいた
「おっと」
その腰を抱き寄せて、体勢を整えて
まどかは破顔した
おたおたと、
慣れないダンスによろよろしながらも、
強引だった自分とのダンスが嫌じゃないと言った
気持ちが、ウズウズした
何人もの男が想いを寄せているは、今 皆の前で自分だけのものでいる
それがまどかには、たまらな嬉しかった

しばらく踊って、さんざん見せつけた後、まどかはとス・・・とダンスの輪をぬけた
「疲れた?」
「ううん・・・・・姫条くん踊るの上手いね」
校庭の隅の方の、人のあまりいない所で二人して座って、
遠くの火を眺めた
「楽しいなぁっ、こーゆうの」
「うん、去年も姫条くん はしゃいでたよね」
「え?」
去年? と
まどかはの顔をほまじまじと見た
去年の文化祭の時期には、自分はを知らなかったのだけれど
「姫条くん 目立ってたもん
 あーやって炎を何回も飛び越えてたでしょ
 私すごいなーって思ってずっと見てたんだ」
ふふ、と
は笑って 今も炎を飛び越えて楽し気に騒いでいる男子の姿を目で追った
(・・・つまり、オレがを知る前から はオレを知ってたってことか?)
ずっと見てたってことは、その後何人もの女の子と踊ってたのも見ていたということか
「・・・・・・」
複雑な気持ちで、まどかは苦笑した
が、そうやって自分のことを見ててくれたのは嬉しいけれど
の様子から、自分をどう思っているかなんてわからなかった
・・・」
「え?」
ちょっとだけ、たしかめてみたくなった
ちょっとだけ

「な、他の女の子と踊ったら・・・・妬く?」

え、と
がまどかの顔を凝視した
それから、頬を染めて困ったような顔をした
「そんな・・・姫条君もてるから踊りたいって子いっぱいいるし・・・
 私は平気だから、こんなとこにいないで、踊ってきて・・・?」
今の言葉を、他の子と踊りたい、と取ったのだろうか
その様子に まどかはまた苦笑した
「オレはとしか踊る気はないねんでっ
 そうじゃなくて・・・
 オレはが他のヤツに誘われたり、他のヤツと踊ったりしたら妬くけど
 ・・・・は、妬いてくれるんかなって・・・思ったんや」
去年は色んな女の子と踊った
その時つきあっていた子とも、それ以外の子とも
そして、それがとても楽しかったけれど 今は違う
今は、だけでいい
を、独占できればそれでいい
は妬いてくれへんの?」
どんどんハマっていく自分
それが手にとるようにわかる
そして、さっぱりわからないの気持ち
嫌じゃないと言ってくれたけれど、
それ以上の気持ちを、いつか自分に持ってくれるのだろうか
他の女の子と踊ったら、妬いてくれたりとか

「あの・・・・・」
うつむいて、黙ってしまったに、まどかは小さく息を吐いた
「んじゃ来年の後夜祭までには、が妬いてくれるようなエエ男になってるわ」
オレばっかりを好きで悔しいし、と
その言葉に、はますます真っ赤になって
冗談ばっかり、と
小さくつぶやいた
うつむいて、顔を隠したままで

文化祭の夜
手をつないで、火が燃えるのを見ながらまどかは想いを自覚した
を好きだということ
これはどうやら、本物のようだ


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理