文化祭 (姫×主)


文化祭の季節がやってきた
お祭り騒ぎの好きなまどかは、この季節は毎回張り切る
今年もノリのいいクラスの男子と一緒に模擬店の準備に張り切っていた
まどかは特製たこやきの屋台担当である

放課後、必要な木材や何かを手配した帰り、職員室の前の掲示板のポスターが目に止まってまどかは足を止めた
各クラスやクラブのポスターの中に、見なれた名前があった
キャスト/
何かと思ってよく見ると、演劇部のポスターだ
そういえば、は演劇部だったっけ
演劇部は、毎年文化祭で劇をやる
どうやら今年はが主役をやるようで、
その名前がでかでかと載っていた
(主役かぁ〜、すごいもんやなぁ)
あんな赤面性で舞台なんかできるのか、と
ちょっと不思議に思ったが、の演技を見に行きたいと思った
日時と場所を確認して、頭に覚え込んだ
タイトルはロミオとジュリエット
(こりゃ美人のジュリエットやな〜
 早う行ってええ場所取らなな)
にこにこと、まどかは上機嫌だった
のドレス姿はそりゃあ綺麗だろう
当日が楽しみでならない

上演日、客席は早くからいっぱいだった
「すごい人気やなぁ・・・」
まどかはというと、前の吹奏楽部の演奏の時から前の席に陣取って準備万端
一番前の真正面
ここならの顔もよく見える、と
開演30分前で満員の会場を見渡した
どんな風に演技するのだろう
演劇など、めったに見ないから楽しみだ
その主役がならなおのこと

ブーーーーー、とブザーが鳴って幕が開いた
皆様おなじみのストーリーで、話は展開されていく
普段からは考えられないような、よく通る声で、が舞台の上を歩く
見事に作られた舞台装置と、華やかな衣装
そして、誰が見ても美人だと言うようなのその姿に 皆がほぅ・・・と見とれた
舞台は完璧である
ただ一点を除いては

(・・・・誰やねん、このロミオ役は・・・・)
物語りの後半、
ロミオとジュリエットのその愛を見せつけられ、まどかはイライラと舞台上のロミオを見遣った
顔も名前も知らない演劇部員
まぁそこそこ美形
それがまた許せなかった
「あなたを愛している」だなんて、
芝居の中のセリフだとわかっていても、の口からそいつに
そんなことが伝えられるなんて

「かーーーっっ」
舞台終了後、昼休みになった
この舞台だけ、と屋台を抜けてきたから急いで戻らなくては、と
まどかは廊下を走りながら どうしようもない気分だった
芝居、芝居
あれは台本なんだから、と
わかっていてもおもしろくない
舞台の上のは綺麗だったし、
演技もうまかった
見ていてひきこまれそうな程に
だからこそ、
その愛の告白に似た 言葉が自分以外の男に向けられたのが気にくわない
気にくわないのだ
とても、とても

昼の忙しい時間に、抜けていたことにさんざん文句を言われつつ、持ち場に戻り
まどかはたこやきを売りさばきながら 舞台ののことを想っていた
ドレスがよく似合って、
赤面することもなく、セリフも完璧で
一番前だったから、表情もよく見えた
は本当に、ジュリエットだった
(練習してるうちに感情移入して相手役のこと好きになったりせーへんのか?)
よくドラマで共演した男女がその後つきあったり結婚したりする話を聞く
はそういうことはないのだろうか
もしや、あの男とつきあっているんじゃなかろうか
ボンヤリ、と
そんなことを考えていた時だった
「姫条くん? 焦げちゃってるよ?」
ふ、と側で困ったような声が聞こえた
「え・・・?」
顔を上げると、目の前にがいて、
手許の鉄板からは香ばしい匂いが漂っていた
「うわわっ、アカンアカン」
あわててひっくり返して、側の皿に移した
すっかり焦げてしまったそれは売りものにはならなさそうだ
いや、それよりも
一体いつ、はここへ来たのか
クスクスと、
笑っている様子に苦笑した
「もぉ着替え終わったんやな」
すっかりいつもの制服に着替えたにそう言うと、は少しだけ頬を染めて笑った
「うん・・・姫条君 来てくれてたね
 びっくりしちゃった、あんな前にいたから」
おかげで緊張したよぉ、と
その言葉にまどかはドキとして、を見た
「あはは、が主役やったらそら見に行くで
 上手かったな〜
 なんや・・・愛の告白なんか迫真の演技やったで」
「ありがとう」
照れたように、の頬がますます赤くなった
複雑である
のこの表情からは、ただの演技だったのか
それとも本当にあのロミオ役の男に気があるのかなんてわからない
「うーーーんっ、決めたっ」
新しいたこやきを焼きながら、まどかが言った
「何を?」
「来年はオレはと同じクラスになるっ
 そんでクラスの演劇でオレとで共演やっ」
「え?!」
驚いてまどかをまじまじとみつめているその様子に、にっと笑った
決めた
舞台の下でもんもんとしているくらいなら、の相手役を奪い取ってやる
その時には演技ではなく、本当の気持ちでセリフを言おう
「愛している」と
「演目はラブストーリーやなっ
 これは絶対にゆずれんなぁ」
ケタケタと、一人楽し気にしたまどかの意図を計りかねて、は首をかしげた
「ええねん、ええねん
 こっちの話や
 それより、これ食わへん?
 オレの特製やからうまいで〜」
焼き上がったたこやきを皿に盛ると、は笑ってうなずいた
「うん、それ買いに来たんだよ」
はい、と
はお金をまどかに差し出すとにっこり笑った
「ごめんね、クラブのみんなの分も頼まれてるんだ
 50個・・・・お願いできるかな?」
それで、まどかは目をまるくして それから笑った
「まいどおーきに〜
 の分はオレのおごりな」
そして急いでまた新しいのを焼きだした
なんだかんだで、楽しい文化祭
あっという間に、終わろうとしている
の、側で


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