バースデー (姫×主)


「なぁなぁ、ちゃん
 今日、何の日か知ってる?」
6月18日、朝一番に まどかがの教室にやってきた
「え?!」
登校してきたばかりのは、その言葉にドキッとする
今日はまどかの誕生日
そんなことは、はじめてまどかを格好いいなと思った時から知っている
何かと噂のまどかは、もちろん女の子にそのデータを把握されていて
情報はすぐに入ってきた
趣味やバイト先、誕生日、身長、体重、好きな女の子のタイプ
「え・・・と・・・」
鞄の中には、どうしようかさんざん悩んだプレゼントが入っている
もし渡せるタイミングがあったら、渡そうと思っていたもの
それを、こんな何の心の準備もできていない朝一番に言われたら、どうしようもなく
はただ頬を染めてまどかを見つめた
「うわ〜やっぱり知らんかったか〜
 ええねん、ええねんっ
 来年は期待してるで〜」
めそめそ、と
嘆くフリをして、まどかが大袈裟に残念がった
そして、それからいつもの笑顔に戻ると にCDを2つよこした
「ほんまはソレ返しにきてん
 そんで自分が聴きたがってたCDもやいといたから」
そして、ヒラヒラと手を振って教室を出ていった
廊下側の窓から、一回だけ顔を出して、冗談っぽく言った
「6月18日は姫条まどかのお誕生日です〜来年は御贔屓に〜」
クラスの何人かが笑って、
女子が2.3人その後を追い掛けていった
手に、可愛くラッピングされた箱を持って

(はぁ・・・・・)
授業中、は何度も溜め息をついた
まどかへのプレゼント
せっかく用意したのに、渡せなかった
追い掛けていった子達みたいに、普通に渡せたら良かったのに
あの時に、プレゼントあるよ、と
言えたら良かったのに
(もぉ・・・私のバカバカ)
こういう時に、自分の性格が嫌になる
どうしてもっと積極的になれないのだろう
最近知り合ったばかりというわけでもなく、
何度もデートをしているのに、未だに顔は赤くなるし
こういう大事な時に、しっかりできない
好きな人へのプレゼントだから、頑張って渡そう、と
昨日あんなに気合いを入れたのに
(はぁ・・・・・)
また溜め息をついた
渡せない、ままなのだろうか

放課後、一日がかりで気合いを入れ直したはまどかのクラスを訪ねた
だが、いない
目立つその姿を探してキョロキョロしていると誰かが教えてくれた
「あいつ今日は午後からサボリって言って帰ったよ」
それで、気分が一気に沈んだ
鞄の中には、眠ったままのプレゼントが重い

それからクラブを終えた後、はふとカレンダーを見てドキ、とした
今日はそういえば、まどかはバイトの日だ
ガソリンスタンドでバイトをしているから、そこへ行けば会えるんじゃないだろうか
思った途端に、何も考えずに鞄を掴んで学校を出た
どうしても渡したいと思った
特別な人だから余計に

「ど・・・どーしたんや?!」
「あ・・・あの・・・・・っ」
ゼーゼーと息をきらせているに、つなぎ姿のまどかが驚いたように目をまるくした
もう陽も沈みかけている時間
「姫条、上がっていいぞ〜」
「はいっ、お先です」
先輩に挨拶をして、まどかはを隅の方へと連れていった
「どしたんや? そんな息きらして」
「あのね・・・っ」
いつの間にか、走っていたのだ
学校からここまで、ダッシュしてしまった
それで今は息もできない程に苦しい
でも、それどころじやなかった
走ったせいでは確実にない、胸のドキドキが身体中に響いている
あのね、と
は鞄からプレゼントを取り出して差し出した
「な・・・なんや・・・わざわざ買ってきてくれたんか?!」
驚いたようなその声に、フルフルと首を横に振った
「ちがうの・・・・
 ほんとはちゃんと用意してたの・・・」
渡せなかったの、と
真っ赤になって言ったを見下ろして、まどかはポカンと口を開けた
「え・・・・?」
「だ・・・だってね・・・
 あんな朝一番で突然だったから・・・こ・・心の準備がね・・・」
できてなかったの、と
恥ずかしそうに告げたに、まどかの頬も同じように紅潮した
「ま・・・マジで?!
 ちゃん、オレの誕生日知っとったん?」
そういえばバイト先も
そういう話をとはしたことがなかったと思ったが
「し・・・知ってるよ」
(色々知ってるもん・・・)
女の子なんだから、好きな人の情報をチェックするのは当たり前
誕生日なんか、最初にチェックする項目だ
相性占いなんかにも、必要なんだから
「ほんまに・・・?
 うれしいなぁっ、オレほんまに嬉しいわ〜!!!」
ガラにもなく、赤面しながらまどかは言い、差し出されたその箱を受け取った
「ありがとうな、
「え・・・・?」
「あ、いや・・・
 えーと、せっかくやから、もー一個プレゼント貰ってもええ?」
「・・・・?」
「名前・・・・って呼んでもかまわん?
 なんかちゃんって、お友達関係みたいやん?」
もーちょっと親密なんがエエんや、と
まどかはにっと笑った
冗談なのか、本気なのか
わからなかったけれど、は真っ赤になりながらもうなずいた
、と
呼ばれるだけでドキドキして、
どうしようもなく顔が熱いけれど、断る理由なんかない
その声で名前が呼ばれるだけで、嬉しくて仕方がないんだから

6月18日
まどかの誕生日
そして、名前で呼びはじめる記念日
二人はまだまだ恋人未満


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理