嫉妬 (姫×主)


は鈴鹿と仲がいい
奴の試合のたびに、応援に行ってるし
そういえば、初めてを見たのも鈴鹿の試合の時だった

「なぁなぁ、
 今度の日曜は空いてるやんな? デートしよ?」
「ごめん
 鈴鹿君たち、ずっと試合勝ってるから今度も応援に行く約束しちゃった」
「えーーーー?!!!
 なんでや〜だいたい今度は他校であるんやろ?
 そんな遠いとこまでわざわざ行くんか?」
「うんっ」

最近、3回に1回くらいはデートの誘いに乗ってくれるようになったに、
まどかはもお連続5回程断られていた
(なんでオレとのデートより鈴鹿やねん〜!!!!)
デートに断られるのは仕方がないと思えるものの、その理由が鈴鹿の試合だというのだから我慢がならない
自分より、鈴鹿の方がいいのか、と
そんなことを考えてしまう
イライラして、まどかはごめんね、というに告げた
「よしっ、んならオレも試合に行く」
自分でも、何を言い出すんだかさっぱりわからなかったけれど
だけを鈴鹿の試合に行かせるのは嫌だった
これは確実に、嫉妬だ

次の日曜、二人で待ち合わせてバスに乗った
「バイクの免許取れたら乗せてったるんやけどな〜」
ぼやくまどかに、が笑う
「あのバイク格好いいもんね
 免許取ったら乗せてね」
「おぅっ、まかしときっ
 を最初に乗せたるからなっ」
「うん、楽しみにしてる」
この外見に似合わず、スピードマシンが好きなは、きっとバイクも怖がらずに乗ってくれるだろう
風が気持ちいいと、自分と同じことを思ってくれるに違いない
早く18才になりたいものだ、と
まどかは狭いバスの中でひとりごちた
こんな窮屈な乗り物より、と二人でいられるバイクの方がずっといい

「よぉっ、、来てくれたんだなっ」
「鈴鹿くん、頑張ってねっ」
「おうっ」
試合前に、客席から身を乗り出して と鈴鹿が楽し気に話している
さんー!!!
 僕らの応援もしてよ〜」
3年生だろうか、
知らない顔が2.3出てきてに手を振った
「はいっ、頑張ってくださいねっ」
それに手を振り返してが笑う
ムカ、と
それだけのことに、一段とテンションが下がる気がした
鈴鹿だけでもイラつくというのに、何なんだ
どこの誰かもわからないような3年生までがと親し気に話している
、バスケ部と仲ええんやなぁ」
「よく応援に来てるから」
いつのまにかお友達になったの、と
が席に座ったままのまどかを振り向いた
なんとなく、
この会場に入ってから不機嫌になったのは気のせいではないようだ
バスの中ではいつもみたいに機嫌良く話していたのに 今はふてくされたように席に座って動かない
「姫条くん・・・・」
が、何が言おうとした時 鈴鹿の声が下からかかった
ーーーー!!!」
それでがまたそっちへ身を乗り出した
「なぁに?」
、この後ヒマか?
 その・・・よかったら先輩とかも一緒にメシでも食わねぇ?」
先輩とやらの声も聞こえた
一緒に行こうよ、と
それに、この子供っぽい嫉妬がピークに達した
がたん、と席を立って まどかがの後ろから顔を出す
「悪いけど、はこの後オレとデートや
 そのお誘いには乗れませんなぁ〜すんません」
にっ、と
意地の悪い顔で笑って言ったら、鈴鹿が驚いたようにこちらを見た
「姫条・・・・おまえも来てたのか」
「来てましたで〜」
が一人だと思ったか、と
まどかは内心してやったり、と
唖然とこちらを見上げているバイケ部諸君を見下ろした
「試合がんばって〜や
 せっかく応援に来てんのに、不様に負けたとこなんか見とーないからなぁ」
それで、鈴鹿が怒ったように顔を赤くして怒鳴った
「言われなくても勝つよっ」
そうして、ベンチへと引き上げていった
あと5分で試合が始まる

「姫条くん、何か怒ってる?」
まどかの隣に座りながら、はそっと聞いてみた
「え? なんで?」
「だって・・・さっきからいつもの姫条くんらしくないから・・・」
むすっと難しい顔をして座っていたり、
かと思うと、あんな意地悪なことを言ったり
「いや・・・怒ってへんよ?
 ごめん、もしかして気ぃ使わしてるか?」
困ったように、ポリポリと頭をかいてまどかが姿勢を正した
この嫉妬による不機嫌が、態度に出てしまったのだろうか
それで、に不愉快な思いをさせていたのだろうか
「ごめんな、そんなつもりちゃうかってん」
「ううん、私は大丈夫だけど・・・」
頬を染めたに、まどかは苦笑した
「なんてゆーか・・・人気者やから嫉妬してんねん
 堪忍な」
「え?」
「鈴鹿もせやけど、なんや3年の奴等とも仲ええやん?
 楽しそうにしとるし、毎回応援に来とるしな」
かなわんなぁ、と
溜め息をついたまどかに、がキョトンと首をかしげた
「だって私、スポーツ見るの好きなんだもん」
わくわくするでしょ、と
何の他意もないような その言い方にまどかは一瞬アレ? と
の顔を見た
そして、ためしに聞いてみた
「ほんなら今度 一緒にサッカーでも見に行く?
 チケット取るで?」
その言葉に、
「うんっ、行くっ」
なんとも意外にも、明るい返事が返ってくる
「・・・・・なんや、ほんまか?」
「うん、どうして?」
「いや・・・・・」
うーん、と
まどかは腕を組んで天井を仰いだ
別に鈴鹿じゃなくてもいいのか
鈴鹿の試合だから応援しに来ているわけじゃないのか
そして、
「さっきオレが勝手にメシの誘い断ったこと怒ってへん?」
「うん・・・・・」
これには、頬を染めて小さく返事が返ってきた
(・・・・ちょっとは期待してもええんやろか・・・)
「この試合が終わったらビリヤードでも行くか?
 教えたんで」
「うんっ」
嬉しそうに、頬を染めたまま笑ったに、まどかは内心複雑だった
どうやら、はこちらが思っている以上に天然だ
まどかの意図や意思に、気付く様子もなく
無意識のうちにこちらを振り回してくれている
鈴鹿に嫉妬していたのがバカらしくなった
仲はいいけどお友達
鈴鹿とはそんな仲か
イライラして、勝手に誘いを断ってしまったことには何とも思わずに
その後デートに誘ったことに、赤面してくれている
今のは、そういうことか

(いや・・・天然やし赤面性やし・・・まだ他に何かオレにはわからん意図が隠されてるんかもしれん・・・)
隣で、始まった試合に目を輝かせているをチラ、と見てまどかは苦笑した
恋愛は手慣れたものだったけれど
どうやらだけは例外だったようだ
計りかねて、振り回されて
その言動に一喜一憂して、
それでも、こんなにも側にいることにドキドキする
楽しくて仕方がない
苦笑は、いつの間にか穏やかな笑みに変わった
嫉妬も、今はもうない

結局、
鈴鹿は奮闘して、今回も勝った
「おめでとうっ、また次も応援に行くねっ」
「おうっ」
ガッツポーズをした鈴鹿に、しまったと思う
(負けろ言うたらよかったんや・・・
 勝ってもーたら またが応援に来るやんか・・・)
チッ、と舌打ちしたまどかに、今度は鈴鹿がにやっと笑った
「おまえは来なくていいよ、姫条」
「いーや、オレも応援に来たるっ」
それで、二人の間にバチっと
何か火花に似たものが飛んだ
の応援パワーで、鈴鹿はどこまで勝ち進むのだろうか
そうして、
奴が勝っている間は、
デートは当分 バスケの試合に限定されそうだ、と
まどかは苦笑した
それならそれで、見せつけるしかないな、とひとりごちる
は誰にも渡さない


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