放課後 (姫×主)


テストが終わった
掲示板の、下から数えた方が早い順位にまどかは苦笑する
「うーん、でもまぁ大健闘やなっ」
赤点が4つ
これは追試に間違いないのだが、思った程は悪くなかった
今回はバイトが忙しくて全く勉強などしていなかったから どうなることやら、と思っていたのだが
「まぁ30点あればええ方やろ〜」
気楽な言葉に、後ろでクス、と笑う声がした
が、そこにいた

「あれ、ちゃん、どーしたん?」
「先生の手伝いで・・・」
職員室から出てきたのか、手には大量のノートを持っている
「これ運ぶん?
 貸し、もってったるわ」
「ええ?! いいよ・・・」
「ええからええから
 こんな重いもん運んだらしんどいやろ
 女の子にこんなもん運ばせるなんてアカンなぁ」
笑って、ノートをなかば奪うように取ったまどかに、は赤くなって笑った
「ありがとう、姫条くん」
「ええって」
それで、二人して教室まで歩き出す
テスト中、のクラスに遊びに行く暇もなかったので、なんだかを見るのが久しぶりな気がした
最近、髪が伸びた気がする
流行りのバレッタで止めてある様子は、どこか清楚でドキドキした
ちゃんは頭いいんやなぁ・・・」
「え? そんなことないよ?」
「そんなことあるある〜
 学年5位やろ? かなわんなぁ・・・」
「そ・・・そうかな・・・」
困ったように、うつむいては小さな声でつぶやくように言った
「氷室先生、厳しいから・・・」
それでまどかが笑った
の担任は、氷室学級に敗北はありえない、とか何とか言っていたっけ
そういえば、学年トップは氷室のクラスが多い
「大変やなぁ
 ちゃんは 男だけじゃなく氷室のお気に入りでもあるんか」
「え?! そんなこと・・・」
また赤くなってうつむいた様子に、まどかは笑った
ライバルが多いのは覚悟をしていたけれど
こんなにも頭の出来が違って、先生のお気に入りと問題児ではつりあわないだろうな、と
苦笑した
らしくもなく、まどかは最近自信をなくしている
こんなにもこちらから押しているのに、は一向に気を許す気配を見せないし
それなのに、自分はハマる一方で
どうしていいのかわからないでいる
は、自分のことなど何とも思っていないのだろうか
「な、ちゃん
 今度、勉強教えてーや」
軽く言ってみた
こういう話題の方が、にはいいのだろうか
「え? 私でいいなら・・・」
「いいに決まってるやん
 そんで、オレが追試にパスしたらデートしよ?」
「う・・・うん・・・」
勢いでか、なりゆきでか
OKを出したに、まどかは破顔した
「よっしゃ!
 断然頑張んでーーー!!!
 、どこ行きたいか考えときやっ」
「うん・・・」
その顔が赤くなっているのを見て、まどかは笑った
赤面性だということは、仲良くなってすぐに気付いた
だが、これは男をその気にさせる魔力をもっている
まるでが自分を好きでいてくれているかのように、錯角させるから
それで、まどかはまた笑った
(ま、ええわ
 とりあえず次のデートは取り付けた)
心が弾んだ
こんなにも可愛い子を連れて歩けるだけで優越感でいっぱいになる
もっと二人で、
もっと色んな所へ
まどかは心を踊らせた
相変わらず、赤面しているを見ながら

それから、補習の間 はまどかにつきあって勉強をした
「今日のプリントはこれや〜」
補習の後、図書館で出された宿題のプリントを出すと が目を通して解き方やら例題やらを教科書やノートで示しながら教えてくれた
その横顔にクラ・・・とする
真剣に勉強を教えてくれているのだから、ちゃんと聞かなければ、と
思っているのに、目が放せない
あんまりきれいで
そんなを、今だけは独占できている気がして
「やっぱええなぁ・・・ちゃんは・・・」
「え? 何が?」
「可愛い顔してんなぁ〜って思って
 そら、男は放っておかんわな〜」
その言葉に、がまどかをねめつけた
珍しく、眉を寄せて可愛い顔が怒った様になっている
「ちゃんと聞いてるの?」
「聞いてるで」
にこり、
笑ってまどかは問題に取りかかる
この補習期間の間に何度も思ったことがある
となら、勉強もさして嫌ではないかもしれない

結局、の予想問題がきいて、追試でまどかは80点を取った
「やればできるやんっ、オレ〜」
これでとのデートはいただきだ、と
浮かれたまどかに鈴鹿が怪訝そうに言った
「何でお前がそんな点取れるんだよ」
それで、得意気に言ってやった
ちゃんの個人授業がきいたわけや」

待ち合わせの図書室で、は眠っていた
誰もいない静かな部屋に一人で、机につっぷして
すーすーと寝息をたてているのを見てまどかは思わず微笑した
(寝顔も可愛いなぁ・・・)
こんなところで眠ってしまうなんて、寝不足なんだろうか
それとも疲れているのか
が腕の下にひいている数学の教科書を見て まどかは瞬間ハッとした
もしかして、
もしかして、ここのところ補習につきあわせてしまったせいで疲れているのだろうか
まどかのために、予想問題を作ったり、わかりやすい説明をノートにまとめてくれたりしていた
まるで、それが天から降ってきたかのように受け取っていたが、
(そっか・・・・あれ全部ちゃんの手作りやもんな・・・)
ノートも、問題も
本来ならやらなくてもいいことを、はしていてくれたのだ
この一週間ずっと、まどかにつきあって毎日ここで勉強を教えてくれたし
家に帰ってからも、まどかのためにノートを作ってくれたりしたのだ
そりゃ寝不足にもなるだろう
急に、ズキンと胸が痛んだ
を独占しているような優越感と、
と二人でいられることに浮かれて そんなことまで気が回らなかった
のことなんか、考えていなかった
自分は恥ずかしい程に、自分のことしか考えていなかった
(か〜!!!
 こんな男 に釣り合うわけないわな〜)
くしゃくしゃと髪をかき回して、まどかは苦笑した
すやすやと眠っているに視線を落として つぶやいた
「ごめんな・・・
 もっとエエ男にならなあかんな、オレ」
そして、上着をそっとその肩にかけた
が起きるまで、ここでこうして見守っていよう
隣の席にそっと座って、まどかはその寝顔を見つめた
想いが、少しだけ形を変えた気がした


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理