92. いつか (氷室×主)  
  ☆リクエスト(氷室。ラブラブカップルの二人。氷室のやきもちで喧嘩→18禁へ)


恋心はいつか冷めるものだ
薄靄のかかった視界がハッと覚めるように、それは温度を下げてゆくのだろう
今までの恋も、別れの時には想いは冷め、意識もはっきりしていたから

「零一さん遅いなぁ・・・」
半年ぶりのはばたき学園で、は零一をまっていた
が卒業してから最初の文化祭
零一の吹奏楽部の勇姿を見ようと、は朝からでかけてきていた
2時頃になら時間が空くから、と
なんとか二人会える時間を取ってくれた恋人に想いをはせながら、人でごったがえす廊下
零一の指定した場所で待っている
だがもう時計は、2時半をまわった

「どうしたのかな・・・」
腕時計を何度も確認する
時間にうるさい零一がこんなに遅れるなど何かあったのだろうか
たしかに今日は文化祭で
は卒業生だからただの客だけれど
零一はクラスやクラブの面倒も見なければならない
何かトラブルでもあったのか、予想以上に忙しくて時間が思うように取れないのか
廊下の向こうを見てみても、零一の姿は未だ見えない
携帯を鳴らしたりしたら迷惑だろうか
文化祭とはいえ これも仕事
もし他の先生や生徒と一緒なら 零一の仕事の邪魔をしてしまう
それは避けたかった
せっかくの文化祭なんだから
今日の主役は自分じゃなくて、準備を頑張ってきたここの生徒と先生なんだから

相変わらず その場所で待っていたの前を ふと見覚えのある顔が通りかかった
「あ・・・」
「ん?」
思わず声を上げたに 彼もまた立ち止まる
彼は在学中同じクラブだった男の子で、その子はあの時と変わらない顔で破顔した
さん、ひさしぶりっ」
「うん、久しぶりねっ」
懐かしい顔に会えて嬉しくて、
は満面の笑みを浮かべた
それに負けないくらい 彼も明るく笑ってくれる
チャラチャラしてて、落ち着きがなくて、先生には不評だった彼のことを はある種の憧れに近い目で見ていた
いつも笑ってて、クラスやクラブを盛り上げて
頼りになって、優しくて
「さっき他の奴も来てたぜ
 この後カラオケ行こうって言ってるんだけど、さんも来いよっ」
多分、3年の時仲の良かった友達とか
いつも一緒にいたクラブの子とか
その子達のことを言っているのだろう
半年ぶりなのに何一つ変わらない彼は、あの頃のように気軽にを誘ってくれる
それが嬉しくて
だが、今日は零一に会いに来たからと その誘いには乗れなくて
は少しだけ首をかしげて、申し訳なさそうに言った
「ごめんね、今日はちょっと予定があるの」
えー、と
不満気にした彼は、だがすぐに気を取り直したのか携帯を取り出す
そして悪戯っぽい目をして言った
「じゃあさ、用事が終わって来れそうなら来いよ
 携帯さ、番号教えて?」
「あ・・・うん、前と変わってないよ」
「あ、そうなんだ
 俺も変わってないからほんとに来れそうなら電話してくれよな」
「うん」
最後ににこっと笑って、携帯をポケットに突っ込んでじゃあ、と
手を振った彼に も微笑して手を振りかえした
今日は多分、行けないだろうけど
懐かしい顔が見れて、話ができて 嬉しかった
あの頃と変わらない彼に また憧れみたいな気分になった
そういう風に、自分もなれたらいいなと思っているから

「随分と、楽しそうだな」
「きゃ?!!」

がまだ懐かしさの余韻に浸っている、その頭上で声は響いた
驚いて振り返って、そこにもう30分以上待ってた顔を見つける
「零一さん・・・びっくりした・・・」
「君は随分と、楽しそうに笑うんだな
 あんな軽い男とでも」
「え?」
見上げた零一の目は、何か含みを浮かべていて いつもの優しいものではなかった
「私、彼と同じクラブだったんです」
「知っている」
「・・・全然かわってなくて、懐かしかったから・・・」
「君はああいう男が好きなのか?」
「え・・・・・?」
零一の言葉に、棘を感じる
どうしてそんな風に言うのだろう、と
嫌な気分になった
いつまで待っても来ない零一を、自分はずっとここで待ってたのに
そこで偶然に会った懐かしい友達と話していただけなのに
「どうして・・・そんな風に言うんですか?」
声が震えた
見上げる視線に 抗議の色が混じる
それでも、零一は冷ややかといえる視線を曲げなかった
「君は俺以外の男にも あんな顔を見せるんだな」
それはまるで、が軽い女だと
そう言っているような響きがあった
途端に、カチンときて
同じくらいに悲しくて
「・・・零一さんのバカ」
ぽつり、と
は俯いてつぶやいた
零一に会いたくて、ここまできたのに
約束の時間におくれても、仕事だからと我慢して待っていたのに
会った途端にどうしてこんなことを言うの、と
思ったら悲しくて、悔しくて涙がこぼれた
「零一さんなんか嫌い・・・」
きっと、顔を上げて睨み付けると 零一は少しだけその表情を緩めた
驚いたような戸惑ったような色が その目にまざる
でももう遅い
傷ついてしまった心は、どんどん涙をあふれさせる
「私は零一さんしか見てないのに・・・っ」
体育館で演劇が始まると、放送が入った
ぱらぱらといた人も、みな体育館の方へ歩いていく
その中でうつむいて、はどうしようもなく立っていた
零一は何も言わない
どんな顔をしているのか、俯いたにはもう見えない
何のために今日ここに来たのだろう、と
もう帰ろう、と
が思った時 高い女の子の声が零一の後ろから聞こえた
「先生っ、こんなとこにいたんですか〜
 劇はじまりますよ、一緒に見に行きましょーよー」
3人くらいの、元気な声
それを聞いて、切なくなった
卒業して半年
零一の生徒だった自分は、零一を好きになって
零一もまた、自分の生徒だったを好きだと言ってくれた
あの恋心はもう 冷めてしまったのだろうか
それはいつか冷めるのだから、と
彼が一般論として言ったのを、聞いたことがあったっけ

女の子達が、の存在に気付いてハッとしたように黙ったのと
零一が何かをその子達に言おうと 口を開いたのと、
がその場から駆け出したのは ほとんど同時だった
毎日側にいられたあの頃
今は、あの女の子達が零一の側にいる
顔を見て、挨拶をして、はにかんだように笑って、先生と呼んだ毎日
そして生まれた恋心
週に1度会えるかどうかもわからない今の二人ではダメなのだろうか
あの零一の言葉が、その証拠なのだろうか

駆け出して、は人のいない方へと向かった
立ち入り禁止の札のかかった、文化祭に使われていない校舎
その足は勝手に、が3年の時に使った教室の前で止まった
「・・・懐かしいな・・・」
涙をふいて、ドアをあけた
黒板、机、掃除用具ロッカー
どれもまだ記憶に新しいものばかりだった
今はどんな子があの席に座ってるんだろう
窓際のまん中あたりの席まで歩いていって、はそっと机に触れた
また涙がこぼれた
ここに座っていた半年前から 想いは増す一方なのに
の中で、零一への恋心は 冷めるどころか確実に形をかえて存在するのに
「零一さんは・・・違うの?」
冷たい言葉も、視線も、
想いが冷めてしまった証拠なのだろうか
もう、彼の心は別の誰かに移ってしまったのだろうか

ガラ、
沈んだ思考は、その音に一気に現実に引き戻された
振り返ると、ドアのところに零一がいる
ドキ、
高鳴る心臓
自分はこんなにも、零一を想っているのに
・・・」
ドアを後ろ手で閉めて、零一はの方に歩いてきた
苦し気な表情
痛い目
卒業式に見たような顔だ、と
ぼんやりとは考えた
あんなことを言ったのに、どうしてそんな顔をするんだろう

が背を向けて走っていくのを呆然と見て 零一は背筋がゾク、とするのを感じた
今まで何度か別れを経験して、
その度に恋人だった女の去っていくのを見たけれど こんな風にはならなかった
恋心はいつかは冷める
別れの時には零一の、彼女達への想いもまた冷めていたから
「先生、今の人恋人?」
「泣いてたよ?」
生徒達の声もあまり聞こえなかった
「ねぇ、先生ってばーっ」
はじゃいだような、興奮した声
スーツをひっぱられて、それでハッとした
視界からが消えた
後を追わなくては

「君達は体育館へ行きなさい」
「えーっ、先生は?」
「いいから早く行く行きなさい」
「・・・はーい」
ごねるような視線を向けて来た3人を有無を言わさぬ言葉で追いやり
その姿が廊下の向こうに消えたのを確認してから の走り去った方へと駆けた
泣かせてしまった
この感情の昂りは何なのか
朝からバタバタして、クラスもクラブもなんとかこなし
ようやく取れたとの時間
遅れてしまったから 待たせて悪かったと
まずそう言わなければと、思っていたのに
を想って、ここまで来たのに

「すまない・・・」
は、3年の時に使っていた教室にいた
窓際の席
卒業前のの席
毎日その顔を確認して
が風邪なんかで休んだ日には そわそわ一日中落ち着かなかった
それほどに恋焦がれていた自分
今も同じような想いでいる
いや、これは日に日にひどくなる
世界中に嫉妬する程の、熱情
「君が他の男に笑いかけるのを見て嫉妬した」
その告白は、とても格好わるかった
一体自分はのいくつ年上なのか
恋愛経験も、人生経験も の何倍もしているのに
このたったひとりに振り回される不様さは何だ
だが心がどうしても、を向く
「すまない・・・」
窓際で立ち尽くしているを、そっと抱き寄せた
抵抗もせず、ただ泣きながら身を寄せるのに たまらなくなる
そのままキスをして、濡れた頬をぬぐった
の目が、今は自分を映している
「俺が悪かった
 嫌いだなんて言わないでくれ」
言葉に、返事を返そうと開かれた唇に もう一度くちづけを落とした
舌を差し込んで、驚いたように逃げるのをからめとって
執拗に口内をかきまわして、
何度も何度も
苦し気にの唇から熱い吐息が漏れるのとか
その抱き寄せた身体が震えるのとか
感じながら想いを注ぎ込み
やがてゆっくりと離れた二人の間に 細い銀糸が引かれた
衝動的に、零一はの身体をその机におしつける
「・・・零一さん?!」
着ていたプラウスのボタンを外し、うなじと鎖骨に舌を這わせ
びく、と反応した肩を 強い力で押さえ込んだ
「れ・・零一さん・・・っ
 こんなとこで・・・っ」
いやいや、とが首をふる
だが止まらない
何なんだろう、この感情は
昂る想いは、衝動は
「誰か来たら・・・っ」
「かまわない」
ここは学校で、
今日は使われていない立ち入り禁止のエリアだけど
誰もこないとは限らない
誰か通ったら 中で何をしているのかわかってしまうのに
「かまわない・・・・・・」
それでも、止まらなかった
愛しさが溢れ出す
つまらない嫉妬で泣かせてしまった
焦がれるこの身体、この想い
恋心なんて、いつかは冷めるものじゃなかったのか
これほどまでに、想った相手はしかいない

ぴちゃ、と
静かな教室に水音が響くと の息遣いはいっそう熱くなった
「は・・・っ」
零一の長い指を奥まで沈め、何度も中をこすりあげられ声を出す
「んっ、んっ・・・・・・はんっ」
くぷ、チュプ、と その淫らの音は零一の意識をどんどん高めていった
身体がいうことをきかなくなる
の知り尽している感じる部分を攻め上げて
濡れそぼったそこに指をいれ、
かきまわし、固くなった花心を弄り濡らし
そうして、その震える白い太股に口付けを繰り返した
舌を這わせて、ひくひくとまるで欲しがっているようなそこに舌をしずめる
「ああぁっ」
の背が反る
そのまま、溢れ出た愛液を舐め上げた
淫らな音が響く
どうしようもないくらいに、身体がうずく
「あっ・・・・あ、零一さん・・・っ」
その赤く固い花心を、舌で転がすと は必死でいやいやと、
首をふって目をきゅっと閉じた
その声に、表情に 欲望が頭をもたげ濡れていく
「ああっ、や・・・、零一さん・・・やだっ」
目に涙をためたその顔に、零一はその行為をやめた
が嫌だと泣くからではなく、自分がこれ以上は保ちそうにないから
を感じたくて、どうにかなりそうだから
そっと、
濡れて震える身体を抱き上げて、床に横たえ
そうして、その想いが故に昂ったものを、そっと潤んだ秘部へとあてがった
熱がつたわる
触れただけで、ぞわぞわと身体を駆け上がっていくような快感がある
「ん・・・っんぅ・・・っ」
腰を進めると、それはから流れる愛液をあふれさせながら奥へ奥へと侵入っていった
ぴちゃ、と
いやらしい音が意識を刺激する
少しきつくて熱くて、ぬれそぼっているその中
零一の全てを飲み込んで、は浅い息を吐いた
切な気に寄せられた眉も、赤く濡れた唇も
紅潮した頬も、涙を浮かべた目も
「全て愛しい・・・・・・」
震える身体をだきしめて、そのもっと奥へと入り込み
二人繋がって、熱を伝えあう
「あ・・・・あふっ」
その震える腰を抱き、何度も奥を突き上げる様にして
零一は想いも嫉妬も、欲望も全てをの中へと吐き出した
こすれあう皮膚、濡れる意識
繋がる音と、の表情が 零一を麻痺させた
そして、二人限界へと達する

ぼんやり、と
目をとじて熱い息を吐くを 零一は抱きしめていた
教室には誰もいない
文化祭は、つつがなく続行中
「零一さんでも妬いてくれたりするんですね・・・」
ぽつ、と言ったの言葉に苦笑する
「恋心はいつか冷めるって、言ってたから
 私への想いも冷めたのかと思いました」
それはとても悲しかったと、
は言って わずかに微笑した
強い腕の中、
身体中で零一を感じて 繋がって愛されて
その余韻で身体はまた夢の中のよう
熱をもって、どうしようもなくそこにあるだけだけれど
「そう思っていたが、への想いだけは違うようだ」
その髪にキスをしたら、くす、とが笑ったのが伝わった
「零一さん」
「ん?」
覗き込んだの目、それは優し気に零一を映している
少しだけ悪戯っぽい顔をして、
少しだけ恥ずかしそうに
腕の中の恋人は微笑して言った

「恋心はいつか、愛に変わるんです」


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