69. 影 (高校生尽×主)  ☆リクエスト(かげぼうしの話)


昔、近所のお姉さんが言ってた
「好きな人の影の心臓の部分を、その人に気付かれずに3回踏んだら 想いが届くんだよ」
まだ幼かったと尽
日がくれるまで そうやってお互いの影を追い掛けて遊んでいた
長く伸びたの影
心臓の部分を1回、2回
「そう簡単には掴まらないもんっ」
笑って逃げて行く大好きな人
あの頃の尽は身体が小さくて、手も小さくて
まで届かなかった距離
いつもいつも、その背中を追い掛けていた
1回、2回

「ねぇ、尽
 ケーキ食べたくならない?」
ふ、と
物思いにふけっていた尽は、の言葉に我に返った
秋の夕暮れ
空も道も真っ赤に染まった帰り道
「つきあうよ」
「へへっ、そうこなくっちゃ
 なんかねぇ、急にモンブランが食べたくなっちゃった」
「俺はチーズケーキ」
「尽っていつもそればっかり」
「甘くないの他に知らないからね」
くすくす、と
楽し気には笑って 手ぶらで身軽な身体をぽんぽんと跳ねさせて先へと歩いていった
昔からずっと、追い掛けているあの背中
肩までの髪がふわふわ揺れて、赤い光に照らされている
、はしゃいでると転ぶよ」
「転ばないわよ、失礼ねぇ」
そこの角を曲がったら のごひいきのケーキ屋さん
まだ開いてるかなぁ、なんて
時計を見るのにうつむいた横顔が とてもとても愛しいと思った
好きな人
誰もが笑うだろう、この想い
自分と血の繋がった姉を好きだなんて
こんなに近しい存在に、恋をするなんて

1歩、2歩
前を歩くの、長くのびた影
それを追い掛けて踏んずけた
「知ってる? 好きな人の影の心臓の部分を その人に気づかれずに3回踏むとね・・・」
1回、2回、3回

「あっ、ねぇ、尽」
「・・・・・え?」
それは3度目
振り返って立ち止まった
顔を上げ、歩を止めた尽
長く伸びた影の上
ちょうど心臓の部分に尽は今 立っている
「お父さんとお母さんのも買って帰ってあげようか」
「ああ・・・そうだね、喜ぶと思うよ」
不覚にも、ドキドキしだした心臓を必死で抑えた
そんな急に振り向くなんて反則だろ
(何やってんだ、俺も・・・)
まるで子供のおまじないみたいな
好きな人の影を3回踏んだら想いが届く、なんて
「じゃあ、お母さんがフルーツのやつで、お父さんがチョコのにしよう!」
楽しそうに独り言を言ったの背中に苦笑して、尽はこっそり天を仰いだ
丁度3回目だったのにな
心臓の部分を踏んでたのにな
(神様、これは踏んだことになるんですか)
くす、
思わず笑みがこぼれた
「どうしたの? 尽」
「なんでもない」
この想いが届くか届かないか、なんて知らない
どうしても止められなかったから 伝えようと決めただけ
世界中の誰よりも好きな人だから、ずっと守っていくと決めたから
「関係ないか」
昔より背が伸びて、手も大きくなって
を抱きしめられるくらい強くなった
こんな風に、
昔届かなかったまで、今はもう手を伸ばせばすぐに捕まえられるから
・・・」
「え・・・・っ?!」
ぎゅ、と
後ろから その身体を抱きしめたら 驚いたような声が上がった
、大好きだよ」
「も・・・もぉっ、何言ってんのよ・・・っ」
真っ赤な顔をして、居心地悪そうに
「尽はそんなんばっかり・・・」
「だって本当のことだからね」
昔は届かなかったまでの距離
今はもう、触れることを恐れてはいないから
たとえ想いが届かなくても
たとえ受け入れてもらえなくても
「この想いは消えないよ」
本気だから、と
囁いて 尽はその茜色の髪にそっとキスした
追い掛け続けた背中
今は華奢に思える女の子の、それを抱いて


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