50. 似合いの (姫条×主)  ☆リクエスト(姫条。連載の設定。両想いだけどまだつきあってない頃の話。)


姫条まどかといえば、誰もが知ってる遊び人
流行りものが大好きで、情報はいつでも早めにゲット
女友達が多くて、週末はたいていデートの約束でうまっていて
チャラチャラしてるから、自然と周りにいる女の子もお色気満点の元気な子ばかりで
そういうのがまどかで、
そういう女の子が、まどかには似合いだと思っていた
本人も、周りも

「そのオレが図書館でデートやもんなぁ・・・」
「え? 何か言った?」
「いやいや、何も言ってへんで」
日当たりのいい窓際の席に陣取って、まどかは朝から図書館にいた
隣で不思議そうな顔をしたのは、優等生の
現在まどかが想いを寄せる唯一の女の子
「ごめんね、つきあわせちゃって・・・」
「ええってええって、オレが勝手についてきたんやから
 は気にせんとレポートやりーや」
「うん」
難しそうな本を何冊も積み上げて、はさっきから何やらノートに一生懸命書いている
それを横でみながら、まどかは自然微笑が浮かぶのをどうしようもなかった
昨日、をデートに誘ったら 午前中は図書館に行く予定だと言われた
月曜提出の生物のレポートができていないから、と
困ったように言った言葉に、ついつい言ってしまったのだ
「ほんならオレも行くから図書館デートしようや」
この図書館の静かな空気
みんな難しい顔をして本とにらめっこ
そんなの自分に合わないと思って、今まで近付かなかった空間
近付く用事もないしな、と
そんな自分が今、微笑みをたたえてここにいる

(は優等生やから たまには優等生デートもしとかんとな)
の横顔をじっと見ながら まどかはいつものデートコースをふり返っていた
遊園地、ビリヤード、ボーリング、プール、映画、買い物、ゲームセンター
あんまり頭がよさそうではない
クラスの勉強のできる奴にきいたら、このあいだのデートは美術館
その前は博物館
今度はオーケストラの演奏を聞きにゆくのだと言うから驚いた
そうか、
みたいな優等生には そういうデートの方がいいのかもしれない

「あの・・・姫条くん・・・」
「ん?」
いつのまにか手を止めて、がこちらを見上げていた
「あんまり・・・見ないで・・・?」
その頬が真っ赤に染まっているのに まどかは破顔する
ああ、何の遠慮もなく見ていたから
恥ずかしがって真っ赤になって
は可愛いなぁ
 そんなん見てるだけやから気にせんと」
「気になるよ・・・」
「だってオレやることないんやもん」
「本・・・読むとか」
の顔見てる方が楽しいから本はいらん」
「・・・」
結局、赤面してうつむいたは、また本に目を戻して何やらノートに取り出した
(可愛い・・・たまらん・・・)
にまにまと、顔が勝手に笑いの形にゆがんでいく
恥ずかしがってるのも、こっちを意識しているのも
真っ赤になった横顔が語ってる
可愛いなぁ、なんて思っていたら 突然が立ち上がった
「あ・・・あの・・・っ
 私コピー取ってくるね」
そして、慌てたように本を一冊もってかけてゆき、残されたまどかはクスクスと
の後ろ姿を見て笑った
くすぐったくて、心地いい
こういうデートは初めてで、だけどたまらなく幸せだと感じる

午後1時、結局家でレポートをすることにしたと二人図書館を出て、まどかは本日の決意を口にした
「今日はの好きなとこ行こ
 どこでもええで、美術館でも博物館でもオーケストラでもっ」
それで、が目をまるくして それからちょっとだけ首をかしげた
「本当にどこでもいいの?」
「ええよええよ、今日は優等生デートコースやねんっ」
「・・・?」
まどかの言葉の意味がよくわからなかったは、だがすぐににこっと笑ってこう言った
「あのね、スケート行きたいな」

自分今日スカートやん、と
思わずつつこんだまどかに、は驚いたような不安なような顔をする
「スカートじゃダメなの?」
「いや・・・あかんってことないけど
 むしろオレは大歓迎やけど・・・」
自分滑れんの?と
また無意識に出た言葉に は笑って首をかしげた
「やったことないからやってみたくて」
その言葉に クス、と
思わずこぼれた笑みを まどかは慌てて隠した
可愛い
可愛い
はどっちかっていうと運動音痴な方だと思っていたから そういうスキー、スケートの類いは敬遠するだろうなと思っていた
まどかとしては、スポーツのできる子とそういうデートを楽しむのが好きだったから それはそれで少し残念に思っていたのだが
「・・・やりたがりぃやねんな」
「え? 何が?」
「いや、こっちのこと」
にこにこと、笑ってまどかはの手を取った
多分、悲惨なことになるのは目に見えている
スケート初体験
それでも、最初からできないから嫌だというよりかは、こうしてやってみたいなぁと思う子の方が断然好感が持てる、と
まどかは笑った
そして二人はスケート場へとやってくる

「きゃーーーーっ、むりっ、むり〜」
普段こんな大声なんか上げないの声が、辺りに響いた
「大丈夫やって、支えてたるから行くで」
「ままま、まって姫条くん・・・っ」
「待ちませーん」
スケートをはいて、早くもへっぴり腰になったを まどかはリングの中央へと連れて来た
「こわいっこわい・・・っ」
「しっかりオレにつかまっときーや」
「ぐらぐらする〜っ」
「そらスケートやからなぁ」
あんまりが騒ぐのがおかしくて、まどかは笑いが止まらなかった
「ほんま可愛いなぁ、は」
初めてのスケート
スカートから覗いた足ががくがく震えているのがわかる
手はしっかりとまどかにしがみつくようにして、さっきから少しも離れない
(ああ、幸せなデートや・・・)
が転ばないようその腰を抱き寄せ
手を取って ちゃんと立たせて
それでまどかはすぐ側でアタフタとしているを見下ろした
「ほら、ちょっと滑ってみるか?」
「えぇぇ?!!! まって・・・まって・・・きゃ〜っ」
少し身体を放して、ふらついたの手を引いた
「やっ・・・やっ・・・きゃっ」
「ほら、ここまで・・・おぉぉ?!!」
ほんの30 センチ離れただけなのに
ほんの一歩でまどかが抱きとめてやれたのに
はその場でフラフラワタワタして、
結局前のめりに転んだ
ギリギリで、支えようとしたまどかの身体ごと押し倒して

「ご・・・ごめんなさい・・・っ」
「あはは、盛大やなぁ」
自分の上に倒れているを抱き起こしてやり まどかはくつくつと笑った
真っ赤な顔をして、今も必死にまどかにしがみついている
たまらない
が相手なら、たとえ一緒に滑れなくても幸せいっぱい大満足だ
「ほれ、もーいっかい」
「きゅ、急に手はなさないでねっ」
「わかってるわかってる」
真剣な顔をして、ふるふると震えながらも自分で立とうとしているを見下ろし まどかは心の底から満足した
もし今、も同じような気持ちなんだったら
このデートを楽しいと思ってくれているんだったら
案外二人は、似合いのカップルかもしれない

「いっぱい転んだ〜」
「今度はスカートはやめときな」
「うん」
帰り道、笑った
幸せだと感じているまどか
そっと聞いてみた
「今日、楽しかったか?」
「うん」
返ってきた即答に、くすぐったくて
さっき考えていた可能性がまた頭を過った
「オーケストラとかききに行きたいと思わへんの?」
「・・・うーん、あれって眠くなっちゃうから」
「美術館は?」
「私 絵が下手だからよくわかんなくて・・・」
「博物館は?」
「えっと・・・ピラミッドのとかだったら好きだけど」
の返事にうずうずしてくる
ああ、やっはり自分とちょっと似てる
「じゃあな、ゲームセンターは?」
「あっ、姫条くんダンスが上手いやつ?
 私 姫条くんが踊ってるの見るの好きだよ」
「遊園地は?」
「ジェットコースターが好きっ」
クスクス、と
が頬を染めて笑った
「どうしてそんなこと聞くの?」
問われて、今度はまどかが赤面する
らしくもなく、あさっての方を向いてごまかしながら 小さな声でつぶやいた
「ほんならオレらってやっぱり、似合いのカップルやん」
たとえ世間が意外と言っても
たとえ二人のタイプが違っていても
同じ時間を楽しめるなら、
デートの帰り道 こうして笑っていられるなら
それは充分似合いの、と言える


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