44. 不機嫌 (高校生尽×主)  ☆リクエスト(連載の設定。高校生尽。最後は甘々で)


今日は尽の誕生日
と二人でデートのはずが、なぜか急にこんなことに
隣のは嬉しそうに奈津実とマシンガントークを繰り広げ、まどかがその隣で茶々を入れる
テーブルの上のカクテルも手伝って、みんながハイテンションに楽んでいる中、
当の尽は、さっきからすこぶる不機嫌だった

、顔真っ赤だよ〜」
「なんか熱いよ〜」
「もしかして酒弱いんちゃうか〜?
 帰られへんようなったら、オレが送ってったるから安心しーや〜」
「バカ、姫条
 には尽君がいるんだから あんたなんかが送らなくたって平気だっての」
「そんなんわかってるやん〜ゆーてみただけやん、なぁ?」

ことの始まりはこうだった
との久しぶりのデートの最中、偶然出会ったまどか・奈津実のお騒がせカップル
会った途端に、卒業以来だと、女同士が盛り上がってしまった
4月半ば
卒業して1ヶ月とちょっと
お互いに新生活が始まって、積もる話もあるんだろう、と
じゃあ食事でも一緒に、と仏心を出したのがいけなかった
今日は尽の誕生日だってのに、はそんなことも忘れてはしゃいでる
懐かしい、同級生達と

、それくらいにしときなよ」
「うん〜」
の手にあるカクテルのグラスを取り上げて、かわりに水を渡すと それを両手でにぎりしめては笑った
丁度夕方だったから、適当な店に夕食に入った
・・・つもりだったのが、いつのまにかテーブルに酒が出て
いつのまにか、はカクテルを一杯飲み干していた
尽がバイト先からの電話で席を外した ほんの2.3分の間に
弱いんだから、加減して飲みなよ」
「わかってるもん
 大丈夫だもん、顔は赤くても意識はしっかりしてるんだから」
「そうは思えないから言ってるんだよ」
ぼんやり・・・と、
どこか焦点の定まらない目で見つめてくるその様子に 尽はため息をついた
は酒には強くない
そもそもまだ未成年だ、ということは この面子を前に言っても無駄なのだろうが
(・・・確信犯)
気に入らないのは、に酒を飲ませたのであろうまどか
そういえば、昔こいつはに惚れてたな、と
思い至って 急に腹が立ってきた
それで、尽はかなり不機嫌なのである

今行ってる学校がどーの、とか
バイト先に素敵な人がいる、とか
女同士は 尽が辟易するほど長話した
一体いつまで話せは満足するのだろう、と
苦笑しながら尽はため息を吐く
と奈津実が親友だったのも、よく知ってる
新生活に忙しくて、なかなか二人が会えなかったのもわかってる
だけど自分だって、久しぶりのデート
すっかり生活が合わなくなった二人が ようやくゆっくり時間をとれた特別な日
尽の、誕生日だってのに

、酔いさめたね?」
「うん、もう平気、熱くないもん」
「そう、じゃあ俺は先に帰ってるから」
「え・・・・?」
突然、立ち上がって微笑した尽に、は慌てて自分も立ち上がった
ふっ、と急に意識がはっきりする
そうだった
今日は久しぶりのデートで、尽の誕生日
この日だけは二人きりですごそうね、と
課題もちゃんと前日までに終わらせたし、バイトだって入れなかった
尽もそのために、空けてくれていた大事な日だったのに
「まって・・・っ、私も帰る・・・っ」
慌てて立ったから、まだ完全に酒の抜けていなかった身体は、ふらりと盛大によろめいた
「急に立たない」
「ふにゃ・・・」
余裕の動作で、尽の腕が身体を支えてくれた
真直ぐ見下ろしてくる目がちょっと、怒ったような色をしてるのに は慌ててその腕を掴む
本気で置いて帰られそうで
ちょっとだけ、不安になった
今日が大切な日だってのをすっかり忘れて、つい久しぶりに会った奈津実と盛り上がってしまったけれど
これじゃ尽の誕生日が台なしで
二人でいられる時間も、もうあとわずか
せつかくの日を潰してしまった
尽も、当然怒るだろう
「やっぱりフラフラするから・・・私も一緒に帰る」
「うんうん、そうしな〜
 今度二人でゆっくり会おうねっ」
「うん」
奈津実に別れを告げるの横で、尽はテーブルの伝票を手に取った
それを遮るように、まどかのおかしそうな声がかかる
「置いてき、今日はオレのおごりや」
「どうしてですか?」
「なんでって自分、今日 誕生日やろ?」
にや、と
まどかが笑ったのを見て 尽はいい様のない気分になった
してやられた、というべきか
一体誰から聞いたのか
知ってて これか
知ってて この特別な日のせっかくのデートを台なしに?
「いやぁ、これはオレのせいちゃうで?
 奈津実がと久しぶりに話がしたい〜 ! いうて聞かんかったんやからな
 ほんでもノリノリで同意しとったやろ?
 オレのせいちゃう、けど自分の嫌そう〜な顔は楽しましてもろーたで
 だから、今日はおごったる」
「・・・それはどうも、ごちそうさまです」
嬉しそうにヒソヒソ囁くまどかに、尽は苦笑した
隣で無邪気に 会話の一部しか聞いてなかったと奈津実がまた盛り上がる
「まどかくん太っ腹〜!」
「よーし、一番高いワイン頼んじゃお〜!」
やれやれ、と
ため息がまた出た
今日は厄日じゃないだろうか
「いつかの仕返しやな〜
 自分のせいでオレふられてんから」
「褒め言葉と受け取っておきます」
行くよ、と
を促して店の外に出ると、ちょっと危なっかしい足取りで も後からついてきた
「尽、ごめんねっ」
カツカツ、と
のくつのヒールの音が響く
春の温かい風が 髪をさらうように吹いていく
「ねぇ、怒ってるの?
 だって奈津実と会うの久しぶりだったんだもん
 ごめんねっ、尽の誕生日のこと忘れてたわけじゃないよっ」
忘れてたくせに、と
苦笑して、尽の歩幅に必死についてくるを振り返った
「とんだ誕生日だなぁ、二人きりどころか」
「だからごめんってばぁっ」
「謝っても時間は帰ってこないよ」
「う・・・・っ」
頬を染めて、がこちらを見上げてくる
目が潤んでるのは、今の意地悪な言葉のせいか
それとも身体に残る酒のせいか
「怒ってるの? ごめんね・・・っ」
ぎゅっ、と
手を伸ばして腕にすがられて、尽は小さく苦笑した
今日は散々だったと思う
デートは中途半端だし、まどかにはしてやられたし
怒ってるのに、こういうを速効で許してしまいそうな自分がここにいるし
「・・・やり直しを欲求するね
 今日のデートを最初から」
「え・・・?」
予定では、映画を見て、食事をして、買い物をして、公園を散歩して、夜景を見て、と
盛り沢山だった今日という日
尽の誕生日を祝うため、と
何日も前からが張り切って立てたプランだったくせに
「わかったっ、それで許してくれる?」
「あと帰ったらサービスしてよね」
「な・・・・なによそれっ、ばかっ」
一瞬目をキラキラさせて、それから真っ赤になって喚いたの腕を取って 尽はその身体を抱き寄せた
「きゃ・・・っ」
やっぱり まだちょっと酒が残っているのだろう
よろめいて、ぽすん、と
尽の腕の中に収まったは、されるがままにその胸に頬をすりよせた
大好きな尽の、特別な日
忘れちゃってごめんね、と
そっとつぶやいて、は目をとじた
わずかに伝わる鼓動が心地いいから、二人はしばらくそうしていた
春の、あたたかい夜のこと


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理