42. 紅葉 (マスター×主)  ☆リクエスト(マスター。お題93「遊園地」のつづき)


秋の風が冷たく頬にふれる季節
校門の側で、落ち葉の掃除をしていたは、側に車が止まったのに顔を上げた
見覚えのある洒落た車
零一が乗っているのとはまた少し雰囲気の違う、
乗り手の遊び心が伝わるもの
それに、側にいた生徒達が皆して顔をあげて視線をやった
今日は、みんなで校門付近の掃除
有志での、この掃除当番に は半ば無理矢理に連れ出されていた
用事がある、というのを聞いてもらえなくて
すぐに終わるからと、と鞄を持って逃げようとしたのをつかまって
もぉ30分程
人数が足りないからとを引き止めたクラス委員の隣で、氷室の監視下 こうやって掃いても掃いてもきりがない落ち葉を掃いていたのだが

、迎えにきたよ」
さん・・・」

車から降りてきたのは、の想像通りの人物だった
ざわ、と女の子達が を見て いい様のない顔をする
好奇心と、憧れ
「何? の彼氏?」
誰かが聞いたのに、声がかぶるようにして陽気に笑ったが仏頂面した氷室へと呼び掛けた
「よ、相変わらずこんな無駄な掃除当番があるんだなー、この学校は」
「・・・何をしに来た、
懐かしい母校へと遊びにきたという様子のは、にこにこと笑って氷室に肩をすくめてみせた
「卒業生が母校にきちゃだめなのか?」
眉を寄せ、突然の訪問者に苦虫を噛み潰したような顔をする氷室と
どうやら氷室の友達らしいに、生徒達はひそひそと囁きあった
「格好いいよね、あの人」
「氷室先生の友達かな? ちょっとイメージ違うけど・・・」
女の子の声を聞きながら、はうつむいて赤面する
楽し気に笑って、何か氷室と話していたは、突然くるりと振り向くと に向かってにこりと笑った
、もう終わる?」
「あ・・・はい・・・」
みんなの視線が、に集まる
「知り合い?」
「あ・・・うん・・・」
上目づかいに、を見遣ると 彼はいつものように笑って氷室に視線を移した
「悪いね、零一
 今日はオレが先約なんだ」
「たから何だ」
「オレの姫を連れてくよ」
「は・・・?」
悪戯っぽくウインクして言ったの言葉に、氷室や他の生徒達が何が何だかという顔をしている間に
は の手からほうきを取ると それを側にいた男子生徒に押し付けた
「じゃ、は返してもらうから」
そうして、当然のようにその肩を抱いて、
やはり唖然と皆が見守る中、を助手席に乗せた
そうして、そのまま静かに車は走り去る
ようやく、女の子達がキャーキャー言い出した頃には 二人の乗った車は遠く小さくなっていった
秋の風吹く、校門前

「あの・・・ごめんなさい・・・」
「ああ、いいよ
 オレが待ち切れなくなって勝手に迎えにきただけだからね」
楽し気なジャズのかかった車内で、頬を染めて言ったに は楽し気に笑った
「久しぶりに学校へ行ったなぁ
 あの掃除、ほんと秋には意味がないと思わない?」
「思います・・・」
クスクス、と
笑いながら運転するを見上げて、も少し笑った
今日は元々と約束があった
なのに掃除当番に無理矢理かりだされてしまったから、少しだけおくれるとメールを入れたのだけれど
まさか学校まで迎えに来るなんて思っていなくて
みんなに騒がれるようなルックスのが こんな風に学校へきて
みんなの前からをさらっていって
今二人は、二人きりで彼の車の中だなんて
ドキドキして、は頬が紅潮するのをどうにもできなかった
彼の側にいるようになって
の恋人になって、まだ1ヶ月
あの遊園地でのキスから、数えるほどしか会っていないけれど 
会うたびはドキドキする
会うたびは、の心をさらっていく
そうして、今、こんなに側に彼を感じて 身体の熱が上がるような
胸がドキドキして苦しいような
そんな気分になっている
は、に恋をしている

車で1時間程走って、は人のいない小道に車を止めた
「わっ、さむい・・・」
「山だからね」
びゅっと吹いていった風からを守るよう、その身体を抱き寄せて はわずかに明るい道の奥を指差した
「ここからは歩きね」
そうして、触れられたことにドキドキしながら
側でが笑うのに くすぐったいような気持ちになりながら
その灯りの下まで来た
そこは小さな神社のような、その名残りを残した庭のような

「わ・・・?!」

淡い灯りに照らし出された紅葉に、は一瞬目を丸くしてただそれを眺めた
「夜桜ならぬ、だね」
すぐ、側でが囁く
そのまま、唇に優しいキスが降りてきた
「・・・っ」
ドキン、と心臓が跳ねる
の長い指が頬に触れて、今度は身体が緊張に強ばった
何度も角度を変えて、
舌をすべりこませ、からみとられ、
息ができないほどに深く深く、
大人相手にするような、優しいけれど熱いくちづけが繰り返される
「ふ・・・あふ・・・」
フラ、と
一瞬足に力が入らなくなったを、はクスクス笑いながら支えてくれた
はキスに弱いね」
それで、一気に身体の体温が上がった
恥ずかしくて、どうしようもなくて
「だ・・・だってっ」
強い腕で腰を抱かれ、の胸に頬を寄せながら は必死に真っ赤になったのを隠そうとした
熱くて、大人のキス
初キスがついこの間で
相手はこんなにも経験豊富な いくつも年上の人で
そんな人に こんな風にされたら、普通の高校生でしかない自分はどうにかなってしまいそうで
その温度とか、
かきまわされる感覚とかに、頭がしびれて足に力が入らなくなる
一瞬、真っ白になる
「これでも手加減してるんだけどな」
「・・・!!!」
悪戯な言葉に、は驚いての顔を凝視した
それで、彼が笑った
「ああ、、真っ赤だよ」
紅葉みたいだ、と
その言葉に ますます顔が熱くなった
の言葉は体温を上げる
どうしようもないくらいに、ドキドキする
「だ・・・・だって・・・・っ」
言い訳をしようとしたのに、言葉は出てこなかった
動揺していたのと、
すぐにその唇をまた、ふさがれたのとで

何度も何度も、
誰も来ないとっておきのその場所で 大人のキスを繰り返して
立てなくなるくらい
身体中が痺れるくらい
「可愛いね、は」
耳もとで囁かれて、強く抱き締められて
「今日ちょっと妬いたよ」
は、ただもう彼にぎゅっと身を寄せているに囁いた
の側には男がいっぱいだ
 零一も、クラスの子達も、オレより長くといられるから、妬いたよ」
長い指が、の切りそろえられた髪をすき
見えた首すじに、はそっとくちづけた
「あ・・・っ」
びくっ、と
の身体に力が入るのが可愛いくて、愛おしくて
「だから、印をつけておく」
わざと、髪にかくれない場所に
ひとつ赤い花を咲かせて、彼はにっこりと笑った
のオレのものだってね」

冷たい風がふいて、紅葉の葉が紅く紅く色付いて
同じくらいに、もまた頬を染める
急速に堕ちてゆく恋
相手がこんな風に大人だからだろうか、と
ぼんやりと考えながら、はただを見つめた
心臓はまだドキドキしている
それを見下ろすように、二人の上に紅い葉がひらひらと散る
秋の寒い、夜のこと


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