19. 無防備 (氷室×主)  ☆リクエスト(氷室の話)


「ねぇ先生、お昼寝しませんか?」
あたたかな日曜日、
緑の芝生を見て嬉し気に言ったを、氷室はまじまじと見下ろした
「昼寝・・・?」
「はいっ、お天気もいいしお昼ご飯食べたら眠くなっちゃいました」
「・・・・・」
それは私といるのが退屈だからか、と
喉元まででかかった言葉をを飲み込んだのは、もしそれが本当なら氷室にとって大変傷つくことだったから
そしてその、提案をしたが突然サンダルを脱いで芝生に上がったのに一瞬言葉をなくしたから
「先生っ、早くっ」
「・・・・」
5月の風は気持ちいい
それがざぁっとなでていく緑の芝生に、の白いスカートがよく映えた
思わずみとれてしまう程に
思わず手を、伸ばしてしまいそうになる程に
「まったく、はしゃぐんじゃない」
やれやれと、ため息を吐きつつ、の隣に座った氷室にはふふ、と笑った
「何が可笑しい?」
「先生の髪が陽にきらきらしてて綺麗です」
「・・・・」
何がそんなに嬉しいのか、にこにこ笑ってこちらを見上げていたは、おもむろに大きく伸びをすると、ぽすん、と芝生に寝転がった
「気持ちいいっ」
ぱたぱた、と足をばたつかせ、それに側に置いてあったサンダルがひっかけられて転がっていく
・・・君はまったく・・・」
女の子なんだからもう少しおしとやかに、と
ねめつけるように言うと、悪戯な目が見上げてにこりと笑った
「だって、先生と一緒だと嬉しくて」
頬を染めては言うと、ころん、とこちらに身を寄せてきた
「先生は楽しくないですか?」
私といて、と
その言葉にドキ、とする
2年間見守り続けてきた少女
3年生も担任を持つことができて どれだけ嬉しかったか
そしてそういう特別な想いに、どれだけ自分が戸惑っているか
こうして、彼女を「社会見学」に誘うたび
彼女と言葉を交わすたび
どれだけ自分がそわそわと、落ち着かないような高揚するような
そんな不安定な気持ちに支配されていく
どれだけこの目の前の少女に、魅かれているか
・・・」
戸惑いながらも、氷室はの名を呼んだ
一緒にいて笑顔を見せてくれるが可愛いと思う
二人、学校以外で会う時には、何か許されたような気持ちになる
無邪気な、他意のない言葉だったのかもしれない
だけど、氷室には嬉しすぎる言葉
「先生といたら楽しくて」
それは自分も同じだから
といることが、とても楽しくて
心休まると、こんなにも想っていると言ってしまいたい

想いを寄せる、この少女に

・・・?」
ふ、と
返事が返ってこないのに、氷室はを見下ろした
今はおとなしく、氷室に寄り添うように寝転がっている
はだけたスカートから白い裸足の足がのぞいて
今日は暖かいから、と
キャミソールの上から羽織っただけの薄いブラウスから肩がはだけている
「・・・まったく」
そして、本人は
先程まであんなにはしゃいでいたはというと、
今やすうすうと、平和な寝息をたてて眠っている
こんなに側で
手の届く位置で
「君は、無防備すぎる」
ため息とともに、氷室はそっと手を伸ばした
壊れ物に触れる様、そっとそっと、その髪に触れた
あたたかな陽射しを受けて、明るい色の髪がきらきらしている
新緑のいい薫りと、気持ちのいい風
側には まるで何の警戒もない少女
ひとつ苦笑して、氷室は手を伸ばせば触れる距離にいるに、囁いた
「いつか君に、言えたらと思う・・・」

無防備な少女
つのる想い
いつかその寝顔も笑顔も全て独占したい
誰かの手に落ちる前に
自分以外の誰かのものになる前に
「私が君を、攫うだろう」

はまだ、何も知らず、氷室のこの想いに気付かず
ただ無邪気な眠りに身を預けている


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