11. 階段 (氷室×主人公)  ☆リクエスト(氷室の話。連載の設定で。3年生でラブラブ)


はよく、昇降口の非常階段にいる
立ち入り禁止と書かれたドア
それを躊躇なく開けて、何段か降りたところに いつも座っている
落ち込んだりした時には特に

・・・君は何度いったらわかるんだ」
4時間目終了のチャイムが鳴り終わって、2分ほどして
唐突にそのドアがあき、いつもの呆れた氷室の声が降ってきた
「ここは立ち入り禁止だと書いているだろう」
「だって・・・」
は、氷室の顔も見ずに ぷい、とそっぽをむく
氷室の声を聞いたら 落ち込んでいたのが余計にひどくなった気がした
秋の冷たい風で、手足が凍えそうだけど
いつまでもいつまでもここにいるのは、気持ちが沈んでいるから
今日はどれだけここにいたって、浮上できそうにないから
「何がだって、だ
 今度は何だ、テストで悪い点でも取ったか」
「違うもん」
氷室は、やれやれとため息をつき 怒るでもなくの側まで降りてきた
「君はここが好きだな」
寒くないのか、と
その言葉に悲しくなる
「寒いけど」
「では教室に戻りなさい」
「やだ」
「今度は何だ?
 この間は作品が壊されたといって、泣いていたな」
ため息をつく氷室を、睨み付けてみた
怪訝そうな顔をして、氷室の目がまっすぐにを見る
「先生に恋人がいた」
「・・・・は?」
「先生つきあってる人なんかいないって言ってたのに」
「・・・・・・何を言っている」
「先生昨日 楽しそうに女の人とデートしてたもんっ」
「・・・・・・」
目に涙がにじんで、は慌てて顔をそらした
嘘つき、と
つぶやいたら、盛大なため息が隣で聞こえた
「それは君の勘違いだ
 くだらん、そんなことで私の授業をさぼったのか」
「くだらなくないもん」
「くだらん」
やれやれ、と
うつむいたを見遣り、氷室は小さく苦笑した
昨日、女の人と
確かに心当たりはある
だが女性と歩いていただけで、どうして恋人だと そう直結するのか
呆れながら 氷室は落ち着いた声で言った
「きらめき高校吹奏楽部の顧問だ
 来週の合同練習の打ち合わせをしていただけだ」
まったく、何をこんな言い訳がましい、と
思いながら ぴくり、と反応したに苦笑する
「ほんと?」
「嘘を言ってどうする」
だいたい、自分が想っているのは目の前のだというのに
当然口に出しては言えないこの想いをが知るはずもなく
こんな風に が自分に恋人がいたなどといって落ち込んでここにいることの方が氷室には理解しがたい
「くだらんな」
「・・・だって あんな風に歩いてたら恋人だと思うもん」
「だからどうして、私に恋人がいたら君がここで落ち込むんだ」
「そんなの・・・私の勝手だもんっ」
「・・・勝手で授業をさぼるような生徒にはお仕置きが必要だな」
「え・・・っ」
ふん、と
この切ない程の想いが自分だけのものであるのに苦笑しながら 氷室はチラとを見遣った
情けないような顔をして、がこちらを見上げている
「さぼった分の授業は補習で受けてもらうぞ」
「え・・・」
「特別に君が理解するまで何時間でもつきあってやろう」
「うぇえ?!!!」
「うええ、ではない
 分かっているのか? こんな受験前の大事な時期に・・・っ」
「はぁーーーいっ、わかってますっ、ごめんなさいっ」
「く・・・っ」
説教モードに入りかけた氷室にストップをかけて、が慌てたように笑った
「えへへ、ごめんなさい」
「・・・何を笑っている」
「笑ってませーん」
「・・・」
笑っているではないか、と
どこかへらへらしているに思いつつ
の顔から暗いものが引いたのに 氷室は少しだけ安心した
朝のHRの時にはいたのに、自分の授業に出ていなかったのことが 授業中ずっと気になって
どうせここだろう、と
授業の後、すぐにここに来た
最初は偶然みつけて注意をして、
それから何度か ここにいるのを見かけていたから
どれだけダメだと言っても はここがお気に入りらしく
落ち込んだりしたらいつも、ここにいるようだったから

「先生、本当に恋人いないんですねっ」
「・・・そんなものいないと言っただろう」
「そっか、よかった」
「何?」
「何でもありませーんっ」
にこにこ、と
補習に連れられながら は嬉し気に笑った
今度ばかりは本気で恋人だと思ったから
相手も若くて美人だったから
いないなんて言ってたのに、と
本気で悲しくなったから
「他の女など見ている暇があるか・・・」
隣でぽつりとつぶやいた氷室に は顔を上げた
「え? なんて・・・?」
「なんでもない
 教師には敬語を使いなさい」
「はぁーい」
さっきとはうってかわっての上機嫌で 隣を歩く少女に氷室はこっそり苦笑した
切ない想いはまだ胸の中
諦めなければと思ったり、
どうしようもないともがいたり、
眠れない程に焦がれたり、
さんざん振り回してくれるに、魅かれつづける
そんな自分に苦笑して
想いをもう一度 自覚した
この恋はまだ、終われない


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理