04. 世界一 (主人公+女の子達)
     ☆リクエスト(主人公は葉月ラブ。女の子同士で甘く切ない恋話をする。)


3年の冬休み
これが終われば3学期
は、親友と5人で、少し気が早い「もうすぐ卒業だね」旅行に来ていた

「私ね、鈴鹿くんに告白しようかと思ってるの・・・」
女の子が2人以上そろえば、確実に話題は恋の話に限定される
そんな年頃の高校3年生
夜、布団の上で 珠美が突然言い出した
「このままマネージャーってだけで終わるの嫌なの」
どちらかというと内気な珠美の発言に、奈津実がすっとんきょうな声を上げた
「えぇぇぇ?!!! 本気?!!!」
志穂もも言葉をなくして、瑞希はいい様のない顔をした
「すごい・・・勇気あるなぁ」
ため息とともに、奈津実が言う
その隣で、眉を寄せて瑞希が言った
「聞きますけど、鈴鹿のどこがそんなにいいの?」
「え? どこって・・・」
珠美の顔が赤くなるのをみながら、可愛いなぁなんて
は思って こっそりとため息をついた
みんなそれぞれに好きな人がいて
もうすぐ卒業だから、卒業したら好きな人と会えなくなる、と
焦ったり、悲しくなったり
受験のムードとそういう恋愛を急ぐムードとで
微妙にクラス中が落ち着かない
「鈴鹿ってそんなにいい?
 あたしも不思議だったんだぁ、バスケ部だったらもっといいのいるじゃん?」
「そっ、そんなことないよぉ 鈴鹿くんは・・・優しいよ?」
「そぅかしら、そういう印象は受けないけど」
「そんなことないっ
 それに、夢を持ってる人って格好いいよ・・・」
みんなに「鈴鹿のどこが」と言われて、珠美は真っ赤になって、言い張った
「夢って言えば格好いいけど〜
 女の子よりバスケが大事なバスケバカでしょ?
 あたしだったら、やだな〜
 自分だけを見てて欲しいもん
 あいつ絶対、珠美を置いてバスケ取るような奴だよ?」
「瑞希も嫌ですわ
 瑞希だけに夢中になってくださる方でないと」
親友の攻撃に、珠美は真っ赤になってうつむいて
だがそれでも はにかんだように笑って言った
「それでもいいの
 私、鈴鹿くんがバスケを取ってもいいの」
それでも側にいたいの、と
その切ない顔に、少しだけみんなが何かを感じた
そういう想い、自分の中にもあるから
「そうね・・・たしかに夢もなくチャラチャラしている人よりはいいかも」
フォローのつもりか、
志穂がチラと奈津実を見て言った
「姫条よりは、誠実な人間だと思うわ」
「なっ、なによそれーっ」
今度は奈津実が真っ赤になる
「鈴鹿はバスケだけど、姫条は他の女のところに行きそうだからよ」
「ぐ・・・っ」
あたっているだけに言い返せない、と
奈津実が悔し気に黙り込んだ
「奈津実は告白しないの?」
サラリ、と
瑞希が問う
いつも一緒で、廊下でも楽し気に二人で話しているのを見かける奈津実とまどかは 実はつきあっているのではないかと噂されている程仲がいい
「よく一緒に帰ったりしてるわね」
「このあいだ誕生日プレゼントもらったって言ってたよねぇ?」
「ほんとは瑞希達にも内緒で、もぅつき合ってるの?」
一人だけ裏切りか? と
一同が奈津実を見つめたのに、奈津実は真っ赤になって それから慌てて否定した
「違う違うっ
 別につきあってなんかないし、プレゼントだってあいつ 仲のいい子みんなにあげてるんだよ
 あたしがあいつの誕生日にあげたからお返しだって言ってたし」
ぶんぶん、と手を振って
否定しながら 奈津実は切なそうに苦笑した
「あたしは告白する勇気なんかないよ
 ・・・だって、それで振られたらどーしたらいいの?
 今のカンジ、すっごいいいんだ
 一緒に帰ったり電話したり・・・デートしたり・・・
 あいつ、そーゆう女友達いっぱいいるけど 告白して振られて気まずくなって、今のカンジが壊れるよりは・・・
 今のままで、あたしはいいよ・・・」
自信なさそうに笑う、その様子に心が痛む
一番に、告白しに走っていきそうなのに
多分、他の誰よりも 恋人に近い位置にいるだろうに
「だってあいつ デート中に平気で他の女からの電話取ったりするんだよ
 デリカシーがないってゆーかさ」
ま、それを好きになったあたしも悪いんだけど、と
笑った奈津実に 瑞希が言った
「そんな失礼な奴は、奈津実の恋人になる資格ないですわね」
奈津実はもててるんだから、他の男に乗り換えるべきよ、と
その主張に皆が苦笑する
たった一人
どうしてこの人なの、と
思う程に 恋はうまくいかない
他の人ではだめだから、悩んで泣いて、それでも好きだと痛感する
「他じゃだめだよ
 あんただって、そうでしょ」
三原のどこがいいのか、わからないけどと
言った奈津実に 瑞希がいつものお高い微笑みを浮かべて言った
「色様は最高よ
 鈴鹿みたいに汗くさくないし、姫条みたいに軽薄じゃないし
 守村みたいにチビじゃないし、葉月みたいに恐くないもの」
「失礼ね
 守村くんはチビなんかじゃないわ」
「チビよ
 志穂の方がずっと大きいじゃない」
「5センチしか違わないわよっ」
珍しく声を荒げた志穂に、まぁまぁと奈津実が割って入った
瑞希の失礼発言は毎度のことだけれど
いつも背のことで志穂と喧嘩になるのはどうにかしてほしいと、
そう思いつつ、
どうにもならない守村との身長差に 本気で悩んでいる志穂を思い遣ってため息が出る
志穂は決して背が高すぎるわけではないのに
好きになった人が自分より背が低いから
それを気にして、いつも劣等感いっぱいで
そんなこと、気にすることじゃないのに、と言ったら
「みんな自分より好きな人の方が背が高いもの、だからわからないのよ」
と、悲し気に言うのだ
こればかりは、どんなに努力してもどうにもならない
「三原が完璧だなんて思わないなぁ
 あんな芸術家きどり
 なんか意味わかんないよ、言ってることもしてることも」
「この間女装してたね」
「あれ、恐かったわ」
「なによ、失礼ねっ
 凡人には色様の美しさや偉大さがわかんないのよ
 それに芸術家気取りじゃありませんっ
 ほ・ん・と・う・に、世界的に有名な芸術家なんだからっ」
いーっ、と
良家のお嬢様らしからぬ顔をして、瑞希がわめく
「まぁ二人は気が合うと思うけどー」
ぶっとんだ者同士、と
奈津実は笑って 苦笑しているに向いた
は、葉月とのことどうすんの?」
突然に、言葉を振られて
どこかボンヤリしていたは はっとして奈津実を見遣った
「え・・・」
「葉月に、告白する?」
「あ・・・・えっと・・・」
葉月という名前を聞いただけで、胸がぎゅっとなる
大好きで、ずっと側にいたくて
卒業が嫌で仕方がなくて
聞いてしまったこと
「ねぇ、葉月くんは志望校どこにするの?」
何もしなくても一番、な葉月と同じ大学に 自分が行けるとは限らなかったけれど
それでも頑張ってみようと思ったから
勇気を出してきいたんだれど

は何の問題もないわよねぇ?
 葉月とクリスマス抜け出すの、瑞希目撃したもの」
少しだけ不機嫌そうに瑞希が言った
色に見てもらおうと思ってドレスアップして張り切った瑞希は、パーティの途中で色の姿を見失った
会場内を一生懸命さがしても、色はどこにもいなくて
せっかくのクリスマスなのに、少しも楽しくなかった
プレゼント交換も終わって、パーテイも終わる、と
その時にやっと、外から戻ってきた色を見つけた
駆け寄って、どこにいたの? と聞いて
色のために一生懸命選んだプレゼントを渡そうとして、
そうしたら、彼は穏やかな顔で言ったのだ
「クリスマスの夜は、もっと別のことを考えていたい」
そうして、受け取ってもらえなかったプレゼント
一緒にすごせなかった最後のクリスマス
それ以来、瑞希は自分に自信をなくしているから
誰にも言えない不安に、押しつぶされそうになっているから

「そうなんだ?
 クリスマス 葉月と抜け出したの?」
「あ・・・うん・・・でも・・・私はもぉダメだから」
一気に気色ばむ一同に、は苦笑して言った
「私は、葉月くんのこと、もぉ諦めたよ」
「え・・・・?」
「えぇぇぇぇぇぇええええ?!!!!!!」
4人が4人ともそれぞれに、
様々な顔をして、声を上げた
「なななな、なんで?」
「そんな・・・どうして?」
奈津実が噛み付かんばかりに身を乗り出し
珠美が目に涙を浮かべた
「どうして、そんな・・・何か言われたの?」
「なんか、私・・・うっとうしいみたい・・・」
苦笑して、
だが そのまま笑えなくなってうつむいたに 皆がシン・・・として視線を向けた
「好きすぎて、周り見えてなかったのかな
 葉月くんの気持ちとか、考えてなかったのかな
 ・・・わかんないけど、うっとうしいからやめろって、言われちゃった」
気付いたら 涙がこぼれていた
秋の進路最終決定の時に、葉月に言った言葉
「葉月くん、どこの大学にするの?」
彼は怪訝そうな顔をして、言った
「そんなの聞いてどうするんだ」
慌てて、ちょっと気になって、と
そう言ったら 彼は不機嫌そうな顔をして言い放った
「そういうの、うざい」

自分の言葉の何が 彼をそんなに不機嫌にさせてしまったのかわからなくて、
すごく落ち込んで、すごく傷ついて
葉月の思いがわからない自分が、嫌で仕方がなかった
「私って、結局自分の想いばっかりだったみたい」
だからクリスマスの日に、葉月に呼ばれたのが嘘のようで
二人で黙って歩きながら どうしていいのかわからないでいた
何も言わない葉月と
同じく何も言えなかった
寒い中、教会まで歩いて
葉月がイライラしたように、それを見上げてたのを見ていた
つらくて
葉月の隣にいることが苦しくて
自分のひとりよがりだった恋を捨てようと、
諦めようと決心していたから
今ふたりきりなことが余計辛くて、は泣きたいのをずっと我慢していた
結局、あの夜葉月が言った言葉はたった一言
「ごめん」
その意味はわからない
には、葉月の意図は何ひとつ 理解できない

「好きな人の言いたいこともわかんないなんて、好きっていう資格ないよね・・・・」
悲し気に が言うのに志穂がため息をつく
「そんなことないわよ
 普通、好きな人と同じ大学に行きたいって思うわ
 私だって、聞いたもの」
「あたしも調べたよ
 本人に聞けなかったからヒムロッチのノート漁ったもん」
「そんなことでウザイだなんて、葉月の方がよっぽどウザイですわ」
瑞希の怒りは、葉月と自分に対して
悲しいクリスマスを過ごしたのは自分だけだと思って
に嫉妬してた
はいいわよね、障害がなくて、なんて思ってた
友達なのに
「葉月なんかやめて正解ですわね
 そんな意味のわからないことを言う奴は・・・」
言って、言葉を飲み込む
意味がわからない、と
クリスマスの日に言われた言葉に、瑞希もまた思ったっけ
「クリスマスの夜は、別のことを考えていたい」
色の言葉の意味がわからなくて
わからない自分が悲しかった
こんなにオシャレをして、こんなにはりきって
何日も何日もかけて選んだプレゼント
手作りなんてできなかったから
せめて自分で働いたお金で、と
慣れないバイトだってやったのに
一生懸命 色を想っているのに
が悪いんじゃないわよ」
いつのまにかボロボロと瑞希まで泣き出した
「瑞希? あんたまで何泣いてんのよ」
「ちょ・・・大丈夫?」
につられたんですわっ」
きぃっ、と
布団のはしっこで涙を拭いながら 瑞希は喚いた
「わけのわからないことを言う方が悪いのよっ
 瑞希は悪くないし、も悪くないっ」
そしてそれでも、
やっぱり好きな人の言葉さえ理解できない自分が悲しい
そんな自分に自信をなくす
だけど想いは それでも消えない
も諦めちゃダメ〜」
子供みたいに瑞希はわめいた
の気持ちがわかる
だから、諦めたなんて言っても はまだ葉月を好きなはず
好きで好きでたまらなくて、苦しいはず
自分のことが、嫌いなはず
「もぉ何なのよ・・・」
苦笑しながら、奈津実がと瑞希の髪をなでた
「でも諦めることないと思うよ
 葉月がワケわかんないのは、いつものことじゃん
 たまたま機嫌が悪かっただけなのかもよ」
うん、うん、と
珠美もうなずく
「結局 二人とも一流大学なんでしょ?
 受かれば同じ学校に4年も通えるんだから チャンスはあるよ」
「そうよ、私もそう思ってるわ」
落ち着いた志穂の言葉に は苦笑してうなずいた
志穂も一流大学志望
志穂が好きな桜弥もそうだった
彼とは学部が別れるだろうけれど、と
それでも同じ学校ならチャンスはあるから、と
この時ばかりは前向きだった志穂に感心したものだった
いつもは、不安でいっぱいのこの恋に 最初から諦めたような感じでいるのに
「守村くんはいい人よね
 志望校、教えてくれたんでしょ?」
「ええ、私には関心がないみたいだったけれど」
「そんなこと・・・ないよぉ」
「あるわよ
 だから、不思議そうにしてたわ
 普通、女がそういうことを聞いたら自分に気があるって、思わない?」
「ああ、守村はそーゆうとこニブそう」
「・・・ニブいだけじゃなくて、私が彼にとってのそういうのの対象外なのよ」
「だからそんなことないよぉ」
眉間に皺を寄せ、志穂は黙り込んだ
劣等感いっぱいの志穂の恋は、小学校以来のものらしく
6年の時に「お前恐い」と好きな子に言われてから自分に自信をなくしている
恋に臆病になって、
こうして、一番最悪を常に想定して話をする
恋をする
「だって、覚悟しておけばショックは少ないでしょ」
それは志穂の持論だったが
ここにいる全員が知っている
覚悟していも
最悪の事態を想定していても
受ける痛みは同じで、恋の切なさも変わりはしない
だって、みんなこんなにも 誰かのことを好きなんだから

「あたしも・・・告白しようかなぁ」
電気を消して、みんな布団の中に入って
真っ暗な中、ぽつ、と奈津実が言った
誰も返事をしなかったけれど、それぞれに想いをはせる
この心を焦がしている人へ
世界一、大好きな人へ
「私も・・・」
忘れられない、と
はそっとつぶやいた
こんなにも心が苦しい
嫌われても、好きでいさせて
せめて、この想いだけは この胸の中に

それから2ヶ月後の卒業式、思い出の教会で
は思い掛けない相手を目の前にしていた
「お前、勘違いしてるだろ・・・」
「え・・・・」
戸惑ったような葉月の顔が、何かを決意したような目が
を見つめて、揺れた
綺麗な目、大好きな目
「あの時、ちょっと親とモメてイライラしてた
 だから八つ当たりした
 お前が一流大学へ行くなら 親の希望で行く大学でも別にかまわない」
やはりわかりにくい説明の、
だが今度は 彼のいわんとしていることがにもわかった
「ごめんって言ったのに」
そして拗ねたように付け足して、葉月は銀色の指輪を差し出した
「俺は言葉が下手だ
 ・・・・だから・・・・・」
言わなくてもわかる、この指輪
これで、あの八つ当たりした日から ずっと元気のないに笑顔が戻ったら、と
葉月は頼り無気に微笑した
「お前が好きだ」
それは、夢にも思わなかった言葉
彼もまた告げた
「ずっと、想ってた」

3月の、また少し肌寒い風が吹き抜けていく中
遠くチャイムが響く校内を 鈴鹿と珠美が走り過ぎていった
「早くしろよっ、バス出ちまうだろー」
「ままま・・・まって、鈴鹿くん・・・っ」
「ああもぉ、その荷物かせっ
 行くぞ、ノロマ」
「あっ、まって・・・・っ」
慌ただしく、駆けていく二人
鈴鹿は片手に二人分の荷物を持って
もう片方は、どうしても遅れてしまう珠美に 今差し出された
頬を染める珠美の表情に は笑う
ああ、もしかして 珠美もうまくいったんだうか
そうでなくても 近い内にきっとそうなる
そんな思いでいると突然 背後からドンっと誰かがぶつかった
「奈津実・・・っ」
「あんた葉月と上手くいったの?」
にや、と
そのにやけた顔が 並んで歩いていた葉月との顔を交互に見遣った
「あたし今から告ってくるからねっ
 姫条にこの後 家来ないかって誘われたんだっ
 これってちょっと他の子より特別じゃない?」
はしゃいで、奈津実はにんまり笑ってかけていく
「二人の幸せパワーももらったし、頑張ってくるかーーー!!!」
そうして遠くで待っていたまどかに向かって走っていく
「・・・なんだ?」
「奈津実、うまくいくといいね」
「・・・ああ・・・・?」
わけもわからず相づちをうった葉月に はクスと笑った
遠くの花壇に、志穂と桜弥がいるのが見える
いっぱい咲いた花を見つめる志穂が真っ赤なのはどうしてだろう
守村が笑って、何か言う
言葉は聞こえなかったけれど なんとなく幸せそうで やっぱり少し安心する
みんな上手くいけばいいのに
こんなに好きなんだから
こんなに想っているんだから

「あ・・・・」
二人、このまま公園を散歩しよう、と学校を出ようとして
校門で、色を見た
「やぁ、くんに葉月くん
 君たちには愛の女神が囁いたようだね」
ギョ、と
いつも無表情の葉月が 一瞬動揺したような顔をした
それにクスと笑いながら
「三原くんは、何してるの?」
は言った
式の後、瑞希が色を探していたのを知っているから
どこを探してもいないんだと、言っていたから
「僕かい? 僕はここで春の妖精を待っているんだよ」
優しい微笑をたたえ、色は笑う
「金の髪のわがままなお嬢さんさ
 僕達は卒業してしまうから、この手で捕まえておこうと思ってね」
温かいものが、胸にいっぱい広がる気がする
ああ、みんなきっとうまくいく
恋に泣いた冬が終わって、温かい春が来る
好きな人の隣で
世界一の存在の、すぐ側で

2005年3月1日 、奈津実、珠美、志穂、瑞希 笑顔で卒業 -----


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理