嫉妬 (氷×主)


今日はの専門学校の入学式
氷室の高校はまだ春休み中で、
教科書や教材を買わなければならないから、というについて 氷室はの通う学校まで来ていた
「終わったら連絡するように」
「はーい」
ちょっと大人っぽいスーツを着て、は校門を入っていく
それを見送りながら、とりあえず車を移動させて氷室は小さく溜め息をついた
この春から被服関係の専門学校へ行くは、どこかキラキラしていて楽しそうで
見ていて微笑ましい反面、どこか焦りに似た感情が生まれる
先程から見ていたら、ここの生徒の半数が男のようで
それもまた、氷室を微妙に憂鬱にさせていた
またここでもモテるのだろうな、と
その思いに苦笑しながらも、氷室にはどうしようもなかった
手に入れて
は自分の恋人となったけれど、
それで不安や心配がなくなるわけではない
今迄は、自分の生徒として毎日のように見ていたが、
学校が始まれば週に1.2度しか会えなくなる
当然のことに、
氷室はそれでも溜め息をついた
どうやら自分は相当、に惚れ込んでいるようで
そんなこと微塵も思っていないのであろうに、やきもきしている
はいつだって、すぐに友達を作ってくるし
相手が友達以上の感情を持つ何かを持っている
きっとここでも、氷室の知らない男と仲良くなって
いつのまにかの周りには、を好きだという男ばかりになるのだろうと思うと、氷室としては憂鬱でならない
溜め息をつきつつ、ぼんやりと窓の外を眺めた
恋人になってもなお、こんなにも焦がれる
を、今すぐ抱きしめたいと思った

2時間もすると、から携帯に電話が入った
門の側で待っていると女の子数人と出てきたの姿が見えた
(・・・・早いな・・・・)
新しくできた友達だろうか
とりあえずは女の子だけなのにほっとしながらも、氷室は自然と微笑した
キョロキョロしているに、軽くクラクションを鳴らすと、その顔がぱっと晴れた
「おまたせっ」
「ああ」
バイバイ、と
女の子達に手を振って、が車に乗り
氷室はゆっくりと車を出した
興奮でか頬を紅潮させたを可愛い思いつつ、
やはり心のどこかに、嫉妬に似た感情があった
はこれから、ここで自分の知らない生活を送るのか

「それでね〜土曜は昼からしか授業がないの〜寝坊できる〜!!」
車の中で、がカリキュラムを見ながら楽しそうに話すのを聞きながら、氷室はどうにもやりきれない気持ちでいた
卒業式から一ヶ月、
毎週のように会ってデートをして、
先生と生徒という枷から抜け出して、幸せな日々を過ごしていたけれど
今、現実を見せられて
急に夢から覚めたような感覚に捕われている
これからは、が目の届かないところで生活するのだ
当然のように、毎日会えるわけではないし
の人間関係も、自分の知らないものになる
それを思うと、氷室は本気で滅入った気分になった
どうにも、
自分がこれほどに独占欲の強い人間だとは思わなかった
そして、
卒業前には、を失わなければそれで幸せだ、と思っていたのに
今はの全てが欲しいと思っている
自分の知らない世界でが生活することに、こんなに気が滅入る程に
贅沢になっている
恋人という関係だけでは物足りなくなっているのか
(人というのは・・・・まったく貪欲なものだ・・・・)
半ば、そんな自分に呆れながら氷室は溜め息をついた
「もぉっ、零一さんっ、聞いてる?!」
それで、が抗議するように声を上げたのにハッとして苦笑した
「すまない、聞いている・・・」
「うそばっかり〜なんかつまんない顔してるもん〜
 溜め息ばっかりついてるし〜」
頬を膨らませて、は前を向いて足をパタパタさせた
「零一さん、私といるのつまんないの?」
怒ったようなその言葉に、氷室は苦笑する
「そんなことはない」
「嘘だ
 だったらなんで溜め息なんかつくの?」
「・・・・考え事をしていた・・・・」
機嫌を損ねたことをアピールしているを、可愛いと思いつつ
氷室は自分とはまるで正反対で、
きっと自分の思っているような不安に似たものなど これっぽっちも思っていないのであろうに、少しだけ腹立たしさを覚え
それで、氷室は赤信号に止めた車のハンドルから、片手だけを放して
そっと、の顎に触れ 顔をこちらに向かせた
「・・・・え・・・・・・?」
そのまま身を寄せて、口づけると
戸惑ったように が目を閉じてそれにこたえた
するりと舌をすべりこませると、その肩がぴくっと震える
「ん・・・・・」
いつもなら、こんな風にはしないけれど
軽く触れる程度の、キスしかしないけれど
今日はそれでおさまる気分ではなかった
の舌をからめとって、中をかきまわし、何度も角度を変えて 深く深く口付けると そのたびに熱い息が漏れた
抵抗できずに、ただされるがままになって
頬をそめ、
解放された時には、そのあかい唇はしっとり濡れていた
「れ・・・いちさん・・?」
戸惑っているから手を放し、信号が青に変わったのを見て、再び車を走らせる
まったく、
罪つくりだと思うのだ
そういう風に、頬を染めてこの手の届く所でこちらを見ている その顔を見なければ安心できないなど
今迄そんなことを思った女がいたか
意識せず、そう思わせているのだからたいした女だと
氷室は苦笑した
突然のキスに、
何のコメントもなく車を走らせる氷室に どうしようもなく
自分が拗ねていたことも忘れて居心地悪そうにうつむいたに 氷室はようやく満足した
それでやっと、も自分を想っていてくれているのだと、
確認できた気がするから

その日、ドライブをして 夕方を家まで送った
氷室の気持ちも落ち着いて、
もすっかり機嫌を直して、一日を終え二人は別れる
「零一さん、明日から学校だよね」
「そうだ」
「浮気しないでね」
「は?」
窓の向こうから、が照れたように笑った
「だってまた担任持つんでしょ」
「・・・・そうだが」
「だったら、可愛い子がクラスにいたら好きになるかもしれないじゃない」
「・・・・相手は高校生だぞ」
「私も高校生だったもんっ」
今度入ってくる新入生と自分とでは、一体いくつ違うと思っているのか
そもそも、こんなにものことでいっぱいいっぱいになっているのに何が浮気か
そんなもの、している余裕もない
のことが気になって
「いいから約束っ
 浮気しないことっ」
いーっ、と
まるで子供みたいにしてみせたに、氷室はおかしくて失笑した
「・・・そんなものしない」
そんなこと、気にもしていないと思っていたけれど
は、こちらが思う程に そんな心配など一切していないのだと思っていたけれど
「ほんと? 約束ねっ」
ぱぁっ、と顔を輝かせて笑ったを、愛しく愛しく感じた
どうやらも、
少なくとも「浮気をするな」と言ってくれる程度には 想ってくれているようだ
自分ほど、切羽つまったものではないにしろ
「おやすみ」
「あやすみなさーい」
身を寄せて、開いた窓から軽くキスをして
氷室は車を走らせた
今は心が温かい
嫉妬に似たものは、の言葉に少しだけ姿を隠した
とりあえずは 


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