前夜 (氷×主)


卒業式の前の晩
は眠れなかった
明日が来たら、氷室との別れがきてしまう
眠って、朝になったら嫌でも卒業
それは、こんなにも心を不安にさせる
氷室を好きになって、何度も経験した胸の痛みが今もずっとここにある
何度も何度も思ったことがある

「どうして、先生なんだろう」

相手が教師じゃなければ、卒業もこんなに辛いものじゃないのに
そして、そのたびに痛感するのだ
それでも諦めきれなくて、
それでもまだ、氷室が好きだという この心に

「あーあ、もぉっ」
起き上がって、枕元のラジオをつけた
氷室が音楽会に連れていってくれるようになってから、ポップス以外の曲も聴くようになったが今はまっているのは ピアノソロやバイオリンソロなどの曲を扱う、ラジオ番組
丁度、ピアノの音が流れていた
耳を傾けると、切なくなるようなメロディ
とても優しい曲なんだけれど
静かで、綺麗な曲
まるで氷室の、素顔みたいな

「先生・・・・・好きです」

言えない言葉を口にしてみた
ベッドにもぐりこんで、ラジオから流れてくる音だけを聴いた
大好きな氷室
言葉にしたら、泣きたい程に想いが溢れた
大好きだから、諦めきれない
明日で、終わりだなんて嫌だった
「先生・・・・・」
呼んでみた
返事はないとわかっていたけど、呼ばずにはいられなかった
「先生・・・・」
なんて辛いんだろう
誰かを好きになることが、こんなに辛いなんて
これほどに優しい想いが、こんなにも痛いなんて
今にも、泣いてしまいそうになるのをこらえて、は目をぎゅっと閉じた
まだ泣いてはいけないと思う
そして、絶対に捨てられないこの想いは諦めちゃいけない
卒業が、全ての終わりだなんて思いたくない
卒業しても、想いは何も変わらないんだから

ピアノの、優しい曲を聴きながら は意識をただ氷室へだけ向けた
大好きな人
怖いだけだったのに、いつのまにかこんなにも大きな存在になっていった人
3年の間に、色んな彼の素顔を知った
そして、そのたびに好きになっていった
いっそ出会わなければ良かったとか
好きにならなければ良かったなんて
こんなにも切なくも甘い想いを、そういう風には言いたくない
目を閉じて、氷室の顔を思い浮かべた
、と
名前を呼んでくれる 彼の声を想像した
「先生、大好き・・・」
今度は穏やかに、目を閉じた
どんなに遠くても
どんなに難しくても
けして氷室を好きな気持ちは諦めない
この想いは、今一番大切なものだから

優しいメロディの中、はゆっくりと眠りに落ちた
卒業式前夜、想いは強くここにある


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