エース (氷×主)


2学期最後のテストで、はとうとう学年1位を取った
「うわぁぁぁっっんっ」
友達と、飛び上がって喜んだの声は、職員室の中まで聞こえてきた
「あはは、 頭いいんだねぇ」
側にいたが、感心したように言ったのを聞いて氷室は眉を寄せ
「いい悪いの問題ではなく、彼女が毎日努力をした結果です」
そう言い放った
1年の冬から、今迄ずっと
はいつもいつも頑張っていた
どれだけ頑張っても1位になれない、と
先生の1番になれない、と泣いていたのはこの間なのに
「それにしても、学年1位はすごいなぁ」
側で笑ったに、苦笑いしつつ氷室はまだきゃあきゃあとはしゃいでいるの声を聞いていた
努力をやめなかった結果がこれ
苦手だった数学も、文句のない解答を出した
採点後、感動したほどだ
こんなにも頑張る生徒を、氷室は他に知らない

その日、放課後 氷室はを探していた
どうしても、誉めてやりたかった
どれだけ努力していたかを知っているから
そして、こうやって結果を出したのだから

探していると、はすぐに見つかった
帰るところなのか、鞄を手に廊下を歩いている
階段から、、と
声をかけようとした瞬間に、誰か別の声が聞こえた
「やぁ、
聞き覚えのある、声
が、向こう側からを呼び止めた
「今回のテスト、よく頑張ったな
 があんなに頭がいいなんて知らなかったよ」
にこにこと、笑いながらが言い、それにがにこっと笑った
「君は何でもよく頑張るなぁ
 どうしてそんなに頑張れるんだ?
 前に、勉強は嫌いだって言ってなかったか?
 やってるうちに好きになったのか?」
冗談めかしく笑って言ったを見上げて、がまた笑った
「うーん、今でも嫌いですよ」
どことなく、の話し方が他人行儀な気がするのは気のせいか
前から思っていたが、は自分以外の教師にはちゃんと敬語を使うのだ
そして、
大抵の場合、にこっと笑う
氷室はあまり好きではない、教師用のお利口な顔で
今も、の顔にはその笑顔が浮かんでいる
無邪気に楽し気に、友達といる時のような笑顔を知っている氷室には、その作ったような顔は どこか一線置かれている気がするのだが
「じゃあまぐれ?」
「ひどーいっ、まぐれなんかじゃないですよぉっ
 頑張ったんですっ、徹夜でっ」
冗談を言って笑ったに、ほら、目の下にクマがあるでしょ、と
も冗談めかしく言った
そして、ちょっとだけ控えめにつけ足した
「私ね、ずっと1番になりたかったんです」
1番になったら氷室先生が認めてくれるから、と
その言葉に、氷室はドキとして 思わず身を固くした
のいる場所からは、この階段の影になっている場所は見えないだろう
ここに自分がいることを知らずに は話している
盗み聞きに、自分の名前が出てきたことに 氷室は慌てて戻ろうかと考えた
のせいで、声をかけるタイミングを逃してしまったし、
何よりこういうことは、あまり趣味がいいとはいえない
「氷室先生は1番が好きだからなぁ」
「そう
 1番になったら氷室学級のエースって言ってくれるんですよっ」
にこり、
は笑って、鞄を持ち直した
「私、ずっとエースになりたかったんです」
特別って感じがしませんか? と
は言って、にぺこっと頭を下げた
「私、そろそろ帰りますね」
「ああ、気をつけて」
パタパタ、と
の足音が遠ざかったのを聞いて、氷室は鼓動が早くなるのを感じていた
の言葉が嬉しかった
氷室学級のエースになりたかった、と
そうやって努力を続けてきたのだ
それを、何より愛しいと感じた
また胸が、熱くなった
今すぐ、思い付く限りの言葉で誉めてやりたい

その日、どうしても衝動を抑え切れず、氷室はの家へと行った
「先生? どーしたの?」
驚いた顔で出てきたに、おめでとう、と
恥ずかしいのを我慢して、言った
冷静になったら、わざわざこんなところまで、こんなことを言いに、と
自分でも何をしているのか、さっぱりで
それでも、来てしまったのだ
に、今日、直接いいたくて
どうしても、伝えたくて
「君の努力の結果だ
 文句無しに、君が氷室学級のエースだ」
その言葉に、の顔がパァっと輝いた
「えへへ・・・・えらい?」
照れたように、そう言ったは、先程に見せたような顔ではない
氷室の知る、無邪気な少女の顔をしていた
満足する
は自分には、素顔を見せているのだ、と感じて満たされる気持ちになる
これは優越感か
「よく頑張った
 ・・・・本当に、嬉しい」
自然に微笑がこぼれる
目の前で、キラキラした目でこちらを見上げているが愛しくて仕方がない
「えへへ」
はただ、頬を紅潮させて照れたようにこちらをみて、それから悪戯な顔をしてみせた
「ねっ、先生」
この顔は、何かたくらんでいる、と
一瞬で悟ったが、氷室にはどうしようもなく ただ黙ってを見つめる
「頑張った御褒美ちょーだいっ」
「・・・褒美?」
にまっと、
相変わらず嬉しそうに口許をほころばせ、
だが目は悪戯に、は氷室を見上げてうなずいた
「一番の御褒美っ」
「・・・・・そんなこと、したことがないな」
「いいじゃないっ
 私にはしてっ」
ダダッ子の顔
まるで子供のそれに、氷室は苦笑した
相変わらずの発想はこちらの予想をこえる
テストで1位になった御褒美など、今まで他の生徒にねだられたことなどない
そして、たとえされたとしても他の生徒なら、くだらないと
その一言で終わらせてしまっただろう
でなければ、その程度だ
だが、今は違う
「そうだな・・・・・」
苦笑しながら、無意識に言葉が出た
「では、考えておきなさい」
「やったぁっ」
飛び跳ねる勢いで は喜び笑って
その様子に、氷室もまた微笑した
可愛いと思う
本気で、何より愛しいと感じる
こんな無邪気なところも、
けなげに努力を続けるところも
そして、悪戯な顔でワガママを言うのも

の家を後にして、氷室は心地よい気分でいた
今はどうしようもなく嬉しいから、
思い掛けない要求も、むしろ楽しみでさえある
テストで一番だった御褒美に、と
一体は 何と言ってくるのか


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