ハッピークリスマス (氷×主)


今日はクリスマス
今、氷室はを連れてのバーへとやってきていた

「メリークリスマス、ちゃん」
「お久し振りです〜!!!」

仕事同然のクリスマスパーティを終え、の店でゆっくりと酒を飲もうと思っていた氷室は、帰り道につかまった
「先生、車じゃないの?」
「ああ、私はこれから酒を飲みに行く」
「あっ、もしかしてさんのお店?!」
「・・・そうだが・・・」
キラキラ、と目を輝かせたに、氷室は内心しまった、と思った
の店に、以前を連れていったことがあった
その時にと意気投合して、やたら楽し気にしていたっけ
「私も行きたーーーーいっっ」
その言葉は簡単に予想できた
「ダメだ、こんな時間に子供が行く場所じゃない」
「いやーーー、私も行くーーーっっ」
「ダメだ」
「ケチーーー」
イーッ、と
言っては頬をふくらませた
まったく、こういう時 本当に高校生かと思う程には子供っぽい
3年になって、時々ドキ・・・とする程に大人びた表情を見せることがあるのに
この差は何なんだ、と
氷室は溜め息をついた
「御褒美〜御褒美これがいいっ」
「う・・・・・」
ダダをこねる顔で、がこちらを見上げている
そういえば、このあいだのテストで1位をとった御褒美を、考えておけと言ったか
「・・・・・・君のご両親が心配するだろう」
「今から電話しますっ
 先生と一緒だったら平気だもん」
にこり、
笑っては、携帯を取り出した
こちらの返事も聞かずにピッと番号を押して それからまた笑った
「おとなしくしてるからっ」
「・・・・仕方ないな」
苦笑した
電話で親と話し出したの横顔を見ながら 氷室はやれやれと天を仰ぐ
こういう時、自分はにかなったためしがない
いつもいつも、
彼女の言葉には、振り回されている

「注文は? レモネードでいいのかな?」
「ああ」
にやにやと笑っているをキッ、と睨み付けて氷室はカウンターに座った
「パーティの帰り?
 オシャレしてるね、可愛いよ その服」
「ホント?
 先生はあんまり好きじゃないんだって〜」
早速、が楽し気に話し出した
「なんでさ、こんなに可愛いのに
 零一、これのどこが気に入らないんだ?」
完全におもしろがっているのか、の声が意地悪い
チラ、と
の服に視線をやって 氷室は一つ溜め息をついた
今日のの服装はというと、真っ赤なミニのスリットドレス
ノースリーブで、会場ではショールを巻いていたが 今はそれも取っている
短くなったの髪では、大きく開いた背中が隠し切れないし、
とにかく露出が多すぎる
似合わないわけではない
むしろそういう形のドレスが似合う体型に育っているには、ぴったりの服装で
クリスマスのパーティなんだから それくらいでもいいと思う
会場で見た時に、見愡れてしまったのは事実なのだ
だが、自分と同じ様に 男子達がを見ているのに気付いて それでいい気分ではなくなった
が自分のものではないとわかっていても、独占欲か
もっと別の何かか
露出しすぎだ、と
思わず口から出てしまったのだ
その時は ちょっとがっかりしたような顔をしていたっけ
それで、もってきたショールを巻いていた
「こんなにセクシーなのになぁ
 零一は素直じゃないねぇ」
「あはは」
冗談めかしく笑ったに、も笑った
氷室がピュアな服装が好きなのは重々承知なのだが
は氷室の好みに合わせたいと思うのをやめた
髪を切ったあの日から、
そういう風に、自分を無理に変えるのはやめたのだ
好きなように、自分らしく
何も偽らない姿を見てほしい
そうして、そんな自分で側にいたい
だから今日も、自分に一番似合うと思ったドレスにしたのだ
氷室は気に入らなかったみたいだけれど

「そうだ、零一
 なんか弾いてくれよ」
「は?」
突然、が言って にっと笑った
「・・・・・客に演奏させる気か?」
「いいじゃないか、一曲くらいさ」
にこり、
含みのある笑顔で言ったに、氷室は溜め息をついた
脅している
この顔は、完全に自分を脅している
断ったら、氷室がを想っていることをバラす、といった顔だ
「・・・・・」
じっとりと、をにらみつけた
自分がピアノを弾いている間にに余計なことを言うな、と
視線で念を押し、ゆっくりと立ち上がる
「わーっ、先生のピアノって好き〜」
の声が跳ねる
ああそうか、
はもう何度か自分が弾くのを聴いているんだったか
あまり人前では弾かないのだが、になら弾いてやりたいという気にもなる
今日はクリスマス
それではこの曲を、へのクリスマスプレゼントとしようか

軽快な曲が店内に流れた
「先生、上手いなぁ・・・」
「そうだね、いつになく心がこもってるねぇ」
カウンターから身を乗り出して、に囁いた
「あいつは変わったよ
 ちゃん、君のせいだと 俺は思うよ」
「え?」
「この曲は君へのプレゼントかな
 この先 君なら何曲でも零一からプレゼントされるだろうけど」
「?」
にこにこと、は笑っただけだった
「ピアノっていいなぁ
 私も弾いてみたいなぁ・・・」
「そうだねぇ
 今度 昼間においでよ
 店をあける前に、好きなだけ弾いてもいいよ」
「え?! 本当?!」
「うん」
軽やかなメロディーを聞きながら、は心を踊らせた
「わ・・・私 ピアノってちゃんと触ったことない・・・」
「じゃあなおさら弾いてみてほしいなぁ
 零一に教えてもらえばいいよ」
「うんっ」
は顔を輝かせて、それからピアノを弾いている氷室を見た
格好いいと思う
大好きな横顔
優し気で、楽しそうで、
教壇の氷室からは考えられないような表情で
(素敵・・・・)
氷室を好きになって良かったと思う
彼の、こういう素顔を知ることができて良かった
そして、
いつまでも、そんな氷室の側にいたいと思う
このままずっと、ここにいたい

帰り道、二人は夜道を歩いていた
満たされた気持ちで、は隣を歩いている氷室を見上げる
楽しかった
無理を言って連れてきてもらって良かった
「先生、今日はありがとう」
「いや」
氷室のピアノがまだ耳に残っている
心地いい音
知らない曲でも、クラッシックの難しい曲でも
氷室が弾いたら耳にすんなり入ってくるのだ
流行りのポップス以外は、眠くなってしまうと思っていたのに
「私も楽しかった」
氷室が微笑した
見上げると、優し気な顔をしていて、それでは嬉しくなって頬を染めた
「先生のピアノ好きっ」
「そうか・・・・それは、光栄だな」
へへ、と
くすぐったい気分で氷室の腕に抱きついた
今だけは、
氷室の隣にいられる、特別なこの夜だけは
「寒いからひっついてていい?」
ドキドキしながら伺うと、当惑したような、
それでいてわずかに頬を染めて 氷室が一つせき払いをした
「まぁ・・・いいだろう」
今夜は冷えるから、と
その言葉に、体温が上がった
寒い夜、でも最高のクリスマス
家まで少し遠い距離
歩きながら、温かい気持ちで二人過ごした
3年目の、ハッピークリスマス



ゲーム中のクリスマスイベントで氷室が弾いてくれるのはアレンジ入ってますよね〜
そのMIDIがあれば良かったんですが・・・ないので原曲を入れてみました。
自分ではMIDIを作れないので探しまくった(笑) 素敵なMIDIは「
仙姑宮」さんからおかりしました!

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