最終進路 (氷×主)


は、最近マジメに進路を考えていた
来週から最後の進路懇談がある
そこでほとんどの者が自分の進路を決定するのだ
も例外ではなく、決定を求められていた
担任である氷室からも、両親からも

「やりたいことかぁ・・・・」
全くない、というわけではない
漠然と、氷室のいうとおり一流大学へ行くのだと思っていた
氷室の母校だし、
彼の言うとおり、やりたいことをそこで見つけるのもいいかな、と思う
一流大学なら両親も文句なしに同意するだろうし
だが最近、はもっと別の道に気が付いたのだ
きっかけは、バイト先のオーナーの言葉だったのだけど

「いいわぁアナタ
 これなんかセンスばっちり、流行るわよぉ」
雑貨屋でバイトをはじめてから、はこのオーナーに随分可愛がってもらった
仕入れにも、何度も連れていってもらったし
彼のショーの手伝いもしたことがある
このあいだなんか、まるで助手みたいに作業を手伝って、それでとても楽しかった
今頃気付いたけれど、やはり自分は何かを作るのがとてもとても好きなのだ
クラブを引退してから余計にそう思う
毎日 何かしら作っていたのが急になくなって 手が寂しくなった
戯れに色々と小物を作ってはバイト先の人にあげたりしているのを、オーナーが店に置いてくれだしたのは最近のこと
以前はオーナーの作ったものを真似て、店に出したことはあっても
自分のオリジナルを出してもらったのはそれが初めてで
その日は嬉しくて仕方がなかった
そして、こういう仕事がしたい、と
思うようになったのである

「そぉねぇ
 アタシはブティックもやってるから興味があったら見てみる?」
そして、見学に行った店の、
その裏で流行の服や新しいデザインの服をあれこれと仕入れたりしているのを見てはまってしまった
ああ、こういうのがいい
こういう風に、服を作って店に出して
そして流行を作ってけたら、どんなに素敵なことだろう
この尊敬する、オーナーのように

「だったらまぁ、そういう学校に行けばいいのよ
 同じようなこと考えてる仲間もいるからいい刺激になるしね
 バイトは今迄通り続けるのよ?
 そしたら私の弟子にしてあげるワ」
今や最先端のデザイナーであるオーナーが、自分を気に入ってくれていて
自分もそういう仕事がしてみたいと思うようになってきた
そういう学校?
それは、被服学校という意味か
それともデザイナー学校のことか
は、学校の資料室で専門学校の資料を漁った
見付けてきたのは、そのどちらもカリキュラムに入っている専門学校だった

「・・・・専門学校?」
「はい」

の提出した資料を見て、氷室は驚いた顔でを見た
いよいよ最後の進路懇談
の出した希望は、専門学校へ進学というものだった
「ああそうか・・・被服関係か・・・」
が3年間、手芸部で頑張ってきたことと、
今、雑貨屋でバイトをしているのを考えれば 不思議ではない進路だった
一流大学に合格する学力があって、もったいないとは思うが
「そうか、君が決めたのなら」
氷室は静かに微笑した
最後の最後に、らしい進路を希望したものだ
けして適当に決めてきたのではないことは、の顔を見ていればわかるし
がそういう生徒ではないことは、自分が一番よく知っているつもりだった
「あれ、反対しないの?」
不思議そうに、がこちらを見て言った
「雑貨屋さんの時は反対だって言ったのに」
「あの時と今では、君の意識が違うだろう
 私は君の担任だ、それくらいはわかる」
コホン、と
姿勢を正して氷室はいい、それからまた少し笑った
「君が希望する進路なら、私は応援する」
それで、も笑った
「えへへ、私 花椿先生みたいな人になりたいんだっ」
夢を語るの、キラキラした顔に微笑した
なら、夢を叶えられるだろう
そのために、全力で努力する姿を 氷室は今迄にずっと見てきているから

帰り道、は氷室の車で将来の話をたくさんした
専門学校に行きながら、花椿の元で修行をして、先生のネクタイをデザインしてあげる、とか
雑貨や日用品のデザインにも興味があるから、先生の家具も作ってあげる、とか
卒業後のの生活にも、自分がそうやって登場することに 氷室は微笑した
冬がきて、春になって、が自分の元から去ってしまっても の中に自分という存在が残るといい
卒業が、全ての終わりだと 今はまだ思いたくない
車の中で、は楽し気に話し続けた
の思い描く将来には、氷室が当然のように いる


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