約束 (氷×主)


春がきて、は3年生になった
今年も氷室のクラスになることがてきて、クラスメイトにも恵まれた
「いやぁっ、やっとと同じクラスになれたわっ」
「離れなくてよかったね〜〜」
不正たっぷりな最初の席がえで、前の席にまどか
隣に奈津実
3年生のクラスも、盛り上がった騒がしいクラスになりそうだった

「このクラスの担任の氷室だ」
始業式を終えて、氷室は窓際の席にチラと視線をやった
がいる
今年も自分が担任をできることになって、正直ほっとした
距離を置かなければと思う反面、自分の目の届くところにいてほしい
そんな気持ちが氷室の中でくすぶっている
「3年生は最高学年だ
 また進路を決める大切な時期でもある
 自覚をもって、節度ある行動を心がけるように」
は、いつもの通りこちらを見て話を聞いている
「進路かぁ・・・はどーすんのぉ?」
そんなに隣からヒソヒソと、奈津実が話し掛けているのが見えた
は一流大学なんとちゃうか?」
まどかも、振り向いてに話し掛けた
氷室は、眉をひそめて、溜め息をつく
こういう光景はクラス換えの名簿を見た時に予想はできた
まどかと奈津実がいたら、この上なくうるさいクラスになるだろうと
そして、
は、そんな二人と相性ばっちりときている
3人そろえばまさしく無敵だろう、と
氷室は窓際で楽し気に話している3人をねめつけた
、姫条、藤井
 私語がつつしめないのなら、席を離すが、いいか?」
「えぇ?!
 イヤイヤ、ちゃんと話聞いてますって
 ちょっと進路のことについて話してただけやん〜」
「席離すなんて横暴〜
 せっかくクジでの近くの席になれたんだもん〜」
慌てて、まどかと奈津実が前をむいた
「ごめんなさ〜い」
へへ、と
も笑って姿勢を正す
まったく、何がクジだ
どうせ引いたクジを取り替え合って この並びになったのだろうに
「小学生じゃないんだ
 くだらない注意はさせるな
 今配った進路希望の紙は今週中に提出するように
 来週から一人ずつ進路懇談をするからそのつもりで」
連絡事項を言って、氷室はH.Rを終えた
手のかかりそうなクラスだが、雰囲気は悪く無い
最後の1年も、あっという間に過ぎそうな そんな予感がした
そう、これがといられる最後の1年なのである


その日、簡単な掃除だけで解散となり、皆それぞれ教室を後にした

「はい?」
クラブへ行く途中なのだろう、
鞄を持って教室を出ようとしたを、氷室が呼び止めた
「今月最後の金曜日にシンの音楽会があるんだが
 君が良ければ・・・」
こちらを見上げているに、氷室はどこか居心地悪い気分で告げた
これではまるでをデートに誘っているようなものだ
教師が生徒をデートに誘うなど、ありえない
どこかうしろめたくて、氷室は複雑の思いでを見た
「行きたいっっ
 シンさんにも会えるんだよねっ、行くっ、連れてってっ」
こちらの気持ちなど、はまったく気にしていないのだろう
眉を寄せた氷室を前に、大きな声ではしゃいだ顔で、は飛び跳ねて笑った
「こら、声が大きい」
思わず辺りを見回してしまった
もう誰もいないのだけれど
「えへへ、デートだぁ」
「社会見学だ」
「どっちも一緒だもん」
にこり、
どこか悪戯な目をしては笑うと、氷室の顔を覗き込んでいった
「約束ねっ、先生
 楽しみにしてるからっ」
そして、そのまま身をひるがえして駆けていった
の後ろ姿を見ながら、氷室は小さく溜め息をつく
罪悪感に似たものがある
これは一人の生徒だけを特別扱いしている証拠
そして、
それはを想うがゆえ
いわば、自分のエゴなのだ
を誘って、まるでデートみたいに車に乗せて音楽会へ行く
社会見学だ、と
それは自分への言い訳
そうでもしなくては、この想いをどうしようもない
溜め息をついた
こういうのは、苦しい

その日、はクラブにいても何をしても、うきうきだった
氷室が誘ってくれたのだ
社会見学だといっていたけれど、
それでも、また連れてって、と言ったあの音楽会に誘ってくれた
覚えていてくれたのだろうか
あの日、自分がまた来たいと言ったことを
(うわーん、デートだよぉっ)
本人には否定されたけれど
それでもいい
二人ででかけられるんだから
(楽しみっ
 早くその日が来ないかなぁ)
うきうきとした気分で、は先の約束を思った
あと1年
氷室といられる最後の1年
たとえ無理だとわかっていても、諦めないと決めたのだ
できるだけ、氷室の側にいて
できるだけ、彼に見てもらえるよう
少しでも、好きだと思ってもらえるよう努力すると決めたのだ
自分はいい女になる
氷室に、想ってもらえるような

それぞれの胸にそれぞれに、約束を抱いて
最後の1年が始まる
お互いに、同じ想いで


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