自覚 (氷×主)


は最近悩んでいた
担任の氷室のこと
それから、同じクラスののこと
相変わらず、の成績はのびてはいるものの、にはいつもかなわない
そして、
吹奏楽部で、放課後もずっと氷室と一緒らいられるに、は最近確実に嫉妬していた
以前には、こんな風には思わなかったのに
好きな先生を取られた、程度の子供っぽい悔しさだったのが、今や
今や胸が苦しくなるような切なさを感じる
何なんだろう
まさか本気で先生が好きなのだろうか
相手はいくつも年上だというのに

、ちょっと話があるんだけど」
放課後、クラブに行く前に奈津実がの席へきた
「どしたの?
 奈津実 今日クラブでしょ?」
「いいの」
奈津実の強い押しに負け、は奈津実について屋上へと上がる
「どしたの?」
「あのねっ
 私、あんたとは仲いいし、だからこんなこと言いたくないんだけど
 ゆずりあったりお互い遠慮したりするのって私、性に合わないんだ
 はっきり言うけど、私 姫条のことが好きだからっ
 あんたとは友達やめるわっ」
振り向きざま、奈津実はを指さして言った
ポカン、と
驚いて開いた口を閉じることもせずに、はまじまじと奈津実を見る
「なんで奈津実がまどかを好きだったら私と友達やめるの?」
「なんでって、あんたも姫条を好きだからでしょっ
 同じ人を好きな以上 仲良くなんかできないよ」
「へ? なんで?」
「だってあんた達すごく仲いいし、クラスも違うのによく一緒にいるのを見かけるもんっ」
「だってまどかは友達だもん
 そりゃ一緒に遊んだりするよぉ」
「友達じゃなくてつきあってるんじゃないの?
 別に私には隠さなくたっていいのよっ」
「えぇ?! 誰がそんなこと言ったの?!」
今度は奈津実がキョトンとした
「だってあんた達名前で呼び合ってるし、クリスマスにブレスレット貰ってたし
 初詣だって二人で行ってたじゃないっ
 二人はつきあってるんじゃないかって皆がうわさしてるんだよ?!」
「つきあってないもんっ」
「つきあってなくても あきらは姫条のことが好きなんでしょ?!」
「違うわよっ」
お互いの口調が激しくなった
女の子特有の口喧嘩で、やりだしたら止まらない
「好きなんでしょっ
 私も姫条のこと好きだから、負けないからっ
 あんたとは友達もやめるからっ」
「だから何で友達やめるとか言うわけっ
 あんたがまどかを好きなのなんか勝手にすればいいでしょっ
 私はまどかなんか好きじゃないんだからっ」
「たったら何でそんなに仲いいのよっ
 嘘ついてんじゃないわよっ」
「嘘じやないわよっ
 私は先生が好きなんだからっ」

いつの間にか怒鳴り合いになっていた
二人して、肩で息をして相手の顔を見つめた
「・・・何? 今のマジ」
「・・・・・・何よ、いいでしょ別に・・・」
また沈黙して見つめ合った
言い合ううちに、勝手に口から出てきた言葉
先生が、好き
これこそ、本当の気持ちなのかもしれない
ここのところずっと感じている氷室へのこの想いは、恋というやつかもしれない
同じ年くらいの男の子に抱くであろうと、ずっと思っていたもの
氷室が誰かといるのを見るのが嫌だし、自分を見てくれたら嬉しい
声をかけてもらったり、誉めてもらったりしたらそれだけで一日が楽しくなって
廊下や職員室では、姿がないか探してしまう
あの声で名前を呼ばれたらドキ、とするのだ
他の誰にも思わないことなのに、氷室には思う
自分は氷室が好きなのだ
しばらくして、奈津実がおかしそうに笑い出した
「うそだーーーっ
 何でよ?!
 あんだけ姫条と噂あって仲よくて、氷室が好きなの?!」
「・・・・・・・・・・悪い?」
奈津実があんまり笑うので、はやがて自分も笑いだした
「しょうがないでしょー
 なんか本気っぽいんだもんー」
「ははぁ、だから勉強頑張ってるんだぁ」
「そうよ、大変なんだから」
それで、二人はまたお互いの顔を見て笑い合った
「なんだぁ
 私が一番のライバルだと思ってたのに」
「まどかは友達だもん〜」
一緒にいて楽しいけど、と
の言葉に奈津実は嬉しそうにのびをした
「よかった、私には勝てないかもなぁとか思ってたんだ
 だってあんた可愛いもん」
「可愛かったら今頃は先生のお気に入りになれてるよ」
「なんで?」
「・・・・
 彼女にはかなわないもん」
それで、ああ、と奈津実はうなずいた
「美人だもんね〜
 文句なしの氷室学級のエースでしょ
 そういやあんた1年からクラス一緒だったっけ」
うん、と
はうなずいて苦笑した
奈津実に言ったらスッキリした
氷室が好きだということ
いつのまに、こんな風に思うようになったのだろう
入学したての頃は、嫌なタイプの先生だなぁなんて思っていたのに
印象も相性も最悪だと思っていたのに
いつのまにか、
いつのまにか自分は氷室を、先生としてではなく、恋愛の対象として見ている
だから、常に氷室のお気に入りという場所にいるが気に入らないし、
勝てないと思うと、切なくなる
「でも意外だったなぁ
 あんたが氷室なんか好きだなんて」
「そぉ・・・・? そーかもね〜・・・」
「絶対姫条だと思ったんだけどな〜」
そして、と
奈津実は苦笑した
(姫条は絶対を好きだよね・・・)
目の前のにその気がなくても、
が見ているのが、まどかではなく氷室だとしても
「でもまぁいいかっ
 がライバルじゃないなら絶交しなくていいんだし」
「だから何でライバルだと絶交するのよ」
「なんでって、気合い入れるためでしょー」
気合い、と
言って奈津実は笑った
とりあえず、女の友情は守られたのである
「じゃあまぁ、私はに協力するからは私に協力してね」
「うん」
そして、共同戦線
奈津実のおかげで、自分の気持ちを自覚してもまた気合いを入れた
好きになってしまったからには、側にいたいし好きになってほしい
例え相手が先生でも、
たとえ自分が彼のクラスの一生徒にすぎなくても
は大きく深呼吸して、もう一度笑った
少しでも氷室の側に
少しでも、氷室に見てほしいと思うから明日も頑張る
自覚した想いは、胸に切なくて温かい 


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