放課後の勉強会 (氷×主)


そろそろ試験の季節がやってくる
夏休みを前にして、生徒達には頭の痛いこの時期
放課後の教室で、と桜弥、そしてまどかが毎日遅くまで勉強会をやっていた

「くぁ〜わからんっ」
「ここがこうなって〜そしたらここの答が出るのよ」
「先にここで計算しておくと、間違えにくいですよ」
最近では数学も桜弥のおかげで克服しつつあると、元々数学が得意な桜弥
勉強会というよりかは、二人がかりでまどかの勉強を見てやっているといった方が正しいのかもしれないのだが
「これ僕が作った予想問題です
 去年1年の、氷室先生の出題傾向から予想しています」
「わっ、すっごい〜
 帰ってやってみよう〜」
「明日みんなで答え合わせをしましょう」
「マジでーーー !!!
 こんだけ居残りで勉強して、まだやんの〜?」
「へこたれない〜!!!
 今やれば晴れて夏休みは補習なしなんだよっ
 この2週間がまんすればいいんだからっ
 ねっ、まどかっ、気合いよっ」
「ぉぉ〜・・・・」
元々も勉強は好きではない
だが、去年は赤点を取ったおかげで夏休みに補習を受けに出てきたのだ
今年は晴れて、まるまる全部休みたい
せっかくの長期の休みを、補習なんかで減らすのは嫌だ
「じゃあ、また明日ねっ」
今日もまた、下校時間の30分くらい前までやって解散
テストまであと2週間
3人の勉強会は毎日続く

その日、氷室はクラブを早めに終えた後 明日の授業で使う教材を教室へ持っていった
放課後、そろそろ下校時間になるという時間なのに まだ中に誰かいる
不審に思って、教室の後ろのドアの窓から中を見た
(・・・・と守村?)
そして、他クラスのまどか
3人して、何やら勉強をしている
「この問題は応用ですから、さっきの公式を使うだけでなく、以前に習ったこの公式を使います
 覚えてますか? そうすれば、解けます」
桜弥の言葉に、もまどかも真剣に聞き入っている
それからカリカリと、えんぴつの音だけがして、3人ともが問題を解きにかかった
(・・・・・・・・)
素晴らしいことだと思う
こうして自主的に勉強をするということ
桜弥はともかく、最近前向きなもまだあるとして まどかまでもが
あの万年赤点の、問題児姫条まどかまでもが、こんなに真面目に勉強しているなどと
教師としての喜びにうちひしがれていた時、問題を解き終えたのか桜弥が顔を上げた
じ・・・と、
それでも遠慮がちに桜弥はを見ている
最初はその手許を見ていたのが、やがて横顔を見つめるようにして それから小さく溜め息を吐いた
そういう、顔をした
ピン、とくるものがある
ああいう顔には、心当たりがある
桜弥はもしかして、を好きなのだろうか
その時に、まどかが両手を上げて天井を仰いだ
「無理やーーーっ、わからへんーーーっ」
情けない声で言い、が顔をあげる
「あかん〜こんな問題出されたらあかんーっ」
「もーっ、まどかっ
 面倒だからって投げないでよっ
 公式使えば解けるんだからぁっ」
「たってなー
 こんなようさん公式使ったら何が何かわからんようになって計算間違い連発やわ
 俺、計算苦手なんやー」
「私もよっ」
ぎゃーぎゃーと二人で言い合いを始め、それをオロオロと困ったように桜弥が間に入って止めている
その様子に、チクリ、と
胸のあたりが痛んで、氷室は教室から離れた
前向きな生徒達の、自主的な勉強会
それを評価し、嬉しく思う気持ちが、今だんだんと冷めていく

自分でもわけがわからなかったが、氷室の気分は滅入っていた
独占欲か、
それとも、別の何かか
が特定の男子生徒と仲が良くしているのを、氷室は落ち着いて見ていることができないのだ
誰とでも友達になれるは、だがまどかと桜弥とは例外に仲がいいのだ
つきあっているのではないか、と
生徒達がうわさするほどに

溜め息をついた
生徒同士が何をしていようが、担任の教師にどうこう言えることではない
そして、
がいくらお気に入りだからといって、男子生徒と仲良くするのに嫉妬するなどどうかしている
どうかしているのだ、
本当に、自分はおかしい
いつからだ?
いつから、自分はこんなにもモヤモヤとした気持ちでいるのだ
一体、どうして

氷室は教材を職員室の机に戻して、溜め息をついた
どうにかしなければならない
生徒は平等に気にかけるべきだし、過剰な意識は持ってはいけない
だけに、こんな風に、振り回されているのはおかしいのだ
ふるふる、と軽く頭を振って氷室は息を吐いた
大丈夫
彼女はただの生徒なのだから
意識して、そう思えばいいのだ
おかしなことになる前に
このモヤモヤの、正体を理解する前に
氷室は苦悩する
たった一人の、生徒のために


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