仲直り (氷×主)


子猫騒動から一夜明けての2 時限目
数学の授業に自分のクラスへ入った氷室は、教壇に立つとチラ、とを見た
が見付けて飼い主を探していた子猫を処分すると告げて、
昨日は彼女を泣かせてしまった
子猫は家に連れて帰って無事なものの、
可愛がっていた猫を処分されたと思っているは到底普段通りというわけにはいかない
案の定、じ・・・とこちらを見ているの顔は、不満気で
いつも見せるにこにことした楽しそうな顔ではありえない
授業をはじめるも、それが気になってなんとなく居心地が悪かった
自分は何も悪くはないのだけれど

「では、この問題を・・・・・
当てられて、が立ち上がった
つかつかと黒板の前に歩いてゆき、チョークを取るとノートを見ながら答えを書いた
書き終えて席へ戻る時も、いっさい氷室を見なかった
予想はしていた
そして、自分に非がないのも知っている
が、
想像以上に気がめいった
これは完全に嫌われてしまったようだ
溜め息に似た苦笑が漏れて、氷室はとひりごちた
「・・・理不尽だな」

さて、休み時間
職員室へ戻ろうとした氷室を、が後ろから呼び止めた
「先生、これわかりません」
教科書を広げては言う
声のトーンはいつもより明るくはなかったものの、から話し掛けてきたことに氷室は驚いてを見た
「わかりませんっ」
ずいっ、と教科書が目の前に押し出された
「どの問題がわからないんだ・・・・?」
あまりに顔の側に押しやられた教科書から少し身体をひいて、
の勢いに押され、氷室は教科書を手に取った
「・・・・・・!」
説明と、公式と問題が書かれたタイプの整った字
それを避けるようにマジックで書かれた可愛らしい字が目に飛び込んできた

昨日はごめんなさい。

驚いてを見ると、居心地悪そうに立っている
「・・・・・」
黙って見下ろすと、叱られた子供のような顔でが口を開いた
「今日、他の先生が言ってたの
 あのあと先生が猫の飼い主見付けてくれたって」
頬が紅潮して、目が必死の色を浮かべている
「会議で決まったことだったのに先生が飼い主探してくれたから、猫ちゃん処分されずにすんだんだよねっ」
昨日、帰る前に報告したのだ
子猫は全部で3匹
うち2匹は生徒が飼い主を見付けてあの場にはいなかった
残りの一匹も、飼い主が見つかったから処分はしなくてもいい、と
「ごめんなさい・・・・」
上目づかいに言うに、ようやく氷室は苦笑をひとつした
どうやら、自分で意識する以上に嬉しいらしい
がこうして、謝っていることが
「いや、いい」
どうやら本当に自分はこの生徒が気に入っているようだ
昨日のようなことがあっても、
こうしてから寄ってくるのが、可愛くて仕方がない
「だが、二度はないと思いなさい」
「はぁいっ」
ぱぁっと顔を輝かせてはやっと笑った
「次は見つからないように外で飼うもんっ」
・・・・・」
えへへ、と
笑ったに眉を寄せてとがめるように名を呼んだが、
はにこっとしただけだった
「先生に嫌われなくて良かった」
「?」
じゃあねっ、と
氷室の手から教科書を取りかえして、は廊下を走っていく
その後ろ姿に、氷室はあきれたような溜め息をついた
どこまでもマイペースな生徒だ
まだ話は終わっていないのに、勝手に切り上げて行ってしまった
最後の言葉は、意外で
それは氷室の心をそわそわと何か妙な気分にさせたけれど
「・・・・まったく懲りてない」
いけしゃあしゃあと、今度は外で飼うなどと言ってのけたのを思い出して苦笑した
わかっているのか、わかっていないのか
氷室は軽く溜め息をついて、
だが、来る時よりも格段楽になった気持ちで職員室へと戻った
家には白い、猫が一匹まっている


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