初詣 (氷×主)


1月1日、朝からまどかが迎えにきた
ちゃーん、あけましておめでとー」
玄関先で元気に叫ぶまどかに、大声で返事して、はコートを羽織った
「おめでとー、姫条くん」
二階から階段を下りながら笑顔で答える
「今年もよろしくなー」
「こちらこそっ」
鞄をつかんで、ブーツをはくと外に出た
今日も寒い
「ひゃーん、毎日寒いな〜」
「なんやそんなに着てんのに寒いんか〜?
 オレのコートかしたろか?」
「いいよ、姫条くんが風邪ひいちゃうもん」
「んじゃこれかしたるわ」
ふわり、
首元にマフラーがかけられて、は驚いてまどかを見た
「いいの〜?」
「ええよ、ちょっとはマシやろ」
「うんっ」
二人して並んであるいていく
今日は、ちょっと遠くに初詣なのだ

寒い中を駅まで歩き、それから電車に乗って人込みの中を歩いていった
「すごい人〜」
「さすがやなぁ、元旦から御苦労なこっちゃ」
神社につくまえから人、人、人
それに屋台も出ていて楽しいことこの上ない
「さっさとお参りして屋台で何か食おうや」
「うん〜」
まどかが根性で人込みをかきわけ、その後をがついて歩いた
わくわくする
願いごとはもう決めてあるのだ
ここは願いが叶うことで有名だから、しっかりお願いしなくっちゃ
まどかの後ろ姿を追いながら、は一人ほくそえむ
願いごとはひとつ
学力アップも捨てがたいけれど、やっぱり・・・

「なぁ、ちゃん
 自分のこと、って呼んでもええ?」
「へ? 何、急に?」
「いや・・・・こーして初詣も一緒に来る仲やしな〜と思ってなっ
 俺のことはまどかって呼んでくれたらええし」
肩ごしに振り返り、唐突に言い出したまどかには一瞬ポカンとした
「嫌やったら無理にとはいわんけどなっ」
にかっ、
いつもの調子で笑ったまどかに、笑い返して
「別にいいよ〜
 じゃ私もまどかって呼ぼっと」
「おうっ、そーしてーや」
途端に嬉しそうに顔を輝かせたまどかに、また笑った
そういえば知り合った時からまどかは自分のことを下の名前で呼んでいたっけ
それが今さら呼び捨てになったところで、特に何かが変わるというわけでもないのだが

ようやく、一番前にたどりついて二人はぽんっ、とお賽銭を投げた
(来年も氷室先生のクラスになれますように〜〜〜)
100円のお賽銭で、呪いでもかけるかの勢いでは両手を合わせた
あんまり力をいれ過ぎて、眉間にしわが入る
(それからもう少し先生と仲良くなれますように〜〜〜)
それから、
(先生にほめられますように〜〜〜)
100円にしては、ちょっと頼み過ぎかもしれない
(全部がだめでも、先生のクラスには絶対なりたい〜)
1分程手を合わせてごにょごにょとやっていただろうか
隣でまどかが笑ったのを聞いて やっと目を開けた
「自分、気合いいれ過ぎやで」
「えー、そぉ?」
うながされて、名残惜しげにその場を離れた
帰り道は人もだいぶ少なくて、それでゆっくりと屋台を見て歩く
途中、的当ての屋台の前で友達と会った
〜、初詣の帰り?」
「うんっ、みんなも?」
わらわらと、総勢で8名程の団体になる
その中に、最近仲のいい藤井奈津実もいた
「私達さ〜これからヒムロッチのところに襲撃をかける予定なんだけどあんたも来る?」
「え?! 行くっ」
瞬間に、返事をしていた
隣でまどかが嫌そうな顔をしたが、がぜん無視した
「姫条、あんたは嫌なら来なくていいのよ」
チラっと何か含みのある視線をまどかに投げかけて奈津実が言う
は私達と一緒に行くからあんたは帰ったら?」
「まって〜やぁ・・・
 ほんまに、行く気なん?」
「行くーーーーっ」
襲撃ということは、もちろん行くと連絡していないのだろう
正月から家にこんなに大勢で押し掛けたらどんな顔をするのだろう
元旦早々、怒鳴られるかましれない
教室で、いつものように
(いやーん、なんか楽しみっ)
顔をほころばせたに、まどかが溜め息をついた
「えーよえーよ、つきあうよ
 ほんま、女っちゅーのは物好きやな〜
 なんで好き好んで正月から あんな奴の顔見なあかんねん・・・」
「だってヒムロッチの驚く顔みたくない〜?」
「みたーーーいっ」
きゃっきゃとはしゃいで歩き出した女の子達に、堪忍したようにまどかがついて歩いた

1時間後、皆は氷室のマンションの前に来ていた
「ヒムロッチ、いたらいいね〜」
「恋人とか出てきたらどーする〜?」
想像をふくらませ、キャーキャーいいながら誰かがチャイムを鳴らす
ドキドキしながらは待った
しばらくして、鍵が開き中から氷室が姿を現す
いつものスーツ姿とは違う、ハイネックの黒いセーターが新鮮に映った
「せんせー、あけましておめでとうございます〜」
「・・・・・・・おめでとう」
さして、驚いた様子も見せずに 氷室は静かに突然押し掛けてきたクラスの女の子達を見回した
「何か用か?」
「挨拶しに来たんです〜
 びっくりするかなーと思って〜
 先生は何をしてたんですか? 恋人が来てたりします?」
にやり、と意地の悪い笑みを浮かべて奈津実が言い
興味の目が一斉に氷室を見た
「仕事だ、
 正月からバカなことをやっていないで帰りなさい
 だいたい人を訪ねる時には先に連絡をするものだ
 こんな風に突然来たら相手にも迷惑だろう」
授業中のような冷たい淡々とした声
(うわーん、休みの日もいつもと同じだ〜)
そんな氷室がむしろ新鮮に思えて、はくす、と笑った
「・・・
「え?」
「・・・いや、なんでもない」
「?」
こほん、と一つせき払いをして、氷室は皆を追いやった
思いがけず、がいたのに(いや、生徒達が来ること事態が思い掛けないことだったのだが) 氷室は自分でもおどろく程に動揺していた
それを悟られないよう平静を装おう
まったく、毎度毎度わけのわからないことをしてくれる
なんだって、こんな突然、しかも新年早々にやってくるのだ
さしずめ奈津実あたりの思い付きで、自分を驚かしてやろうなどと思ったのだろうが
そして、そのこと自体よりも、の姿に揺れた自分に気付いて苦笑した
(ワケがわからん・・・)
まったく、が関わると、自分はどうかしてしまうようだ
おかしな気分になる
愛しいような、
「先生また新学期ね〜」
奈津実がいじわる気に笑って
「正月から仕事なんて寂しい奴〜
 恋人の一人や二人連れ込んでるのを見たら弱味握れたのになぁっ」
こちらを向いて氷室に聞こえないようにボソボソと言った
「残念でした〜」
とても気分が浮ついているのを感じる
お正月から氷室に会えたからか
相変わらず仕事ばかりしている氷室がおかしかったのか
は神社で祈った願いごとを思い出した
(うんっ、2年も絶対氷室学級がいいっ)
いつのまにか火照った頬に、冷たい風が気持ちよかった
生徒達は、氷室のマンションを後にする


「まったく君たちは・・・正月早々何をしている」
初叱られです(笑)
私服先生☆ 先生描くのは難しいです〜(>_<。)

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