祭のあと (氷×主)


怒濤の文化祭が終わった
氷室はすっかり静まり返った廊下を歩いている
生徒達は片付けを終えて帰っていった
時計は夜の8時をまわっている
生徒会も帰り、先生方もほとんど帰宅した
今年の文化祭
氷室の吹奏楽部は毎日の練習の成果を発揮でき、大変満足いく結果をおさめた
そして、クラスの出し物である喫茶店は 昼に様子に見に行った時には大評判だった
女子が交代でウェイトレスをやり、裏で男子と女子が一緒にジュースを作っていた
ジューサーに野菜や果物をいれてのミックスジュース
それと、コーヒーと紅茶
メニューはそれだけだったが、途中で切れた果物を男子が買いに走ったりと、皆でよくまとまってやっていたようだ
(・・・・今回はクラブにかまいすぎて何もしてやれなかったな・・・)
毎日顔を出すようにはしていたのだが、それでも吹奏楽部の練習のある日にはそっちばかりにかかりっきりになってしまった
文化祭委員として、頑張っていたには不満があったかもしれない
その時には考えもしなかったが、終わった今 そう思う
(・・・私も周りが見えていないか・・・・)
今年の吹奏楽部は優秀で、ついつい氷室は期待してしまうのだ
より完璧な演奏を、と
いつもより熱が入っている
それを今さらに、自覚した
ガラリ、
教室が片付けられているのを確認してから鍵をかけようと中に踏み込んだ
そして一瞬、動きを止めた

「・・・・

が窓際の自分の席で、眠っている
腕の下にしかれたノートは日誌だろうか
すやすやと、少女は小さな寝息をたてて熟睡していた
8時過ぎだ
生徒達が帰り出したのは6時頃だったから それから2時間もここで眠っているのだろうか
昨日と今日、二日にわたっての文化祭で疲れたのだろう
片付けて、日誌を書いている途中で寝てしまったということか
「・・・・・よくがんばったな」
そ・・とそのやわらかな髪に触れてつぶやいた
転校してしまった友達の代わりに文化祭委員になって、ここまで皆をひっぱってきたを氷室は高く評価している
毎朝毎朝、早くにきてはその日の作業予定表を作ったり、一人でできる作業を進めていたりしていた
放課後も、皆と一緒に毎日残っていたのだ
会議にも、ちゃんと出ていたし、担任である自分への報告も欠かさなかった
正直、これほどに頑張るとは思っていなくて、
それで氷室は嬉しかったのだ
がいれば大丈夫だと、甘えていた部分があったかもしれない
さらり、
もう一度 髪をなでた
疲れはてて眠っているこの少女が愛しくてたまらない
「本当に、よく頑張った」
起きたらもう一度言うであろう台詞を、氷室はの寝顔を見下ろして言った
このままずっと見ていたい
誰もいないこの教室で、氷室はをみつめた
温かい想いが、胸に溢れる

それから校舎の正面まで車をまわして、もう一度教室へ戻り、まだ眠りつづけているをそっと抱き上げて車に乗せた
起こさないよう注意しながら静かに発車させると小さくが声を上げる
むにゃむにゃ、と何かつぶやいたような気がしたが聞こえなかった
(・・・可愛い生徒だ)
今やは、氷室の自慢の生徒だ
数学の点は悪いが、こんな風に頑張る姿を見ていたらそんなことはどうでもよくなる
前向きな彼女が、たまらなく愛しい
隣で眠る少女が、大切でならない

車がゆっくりとの家の前に止まった
起こすのは可哀想だったが、軽く肩に手をかけてゆすった
、起きなさい・・・」
「ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
氷室のかけてやったスーツの上着を抱きしめるようにして、は身体をちぢめた
、君の家についた
 帰ってベッドで寝なさい」
「ん・・・?!」
ぱち、
まさにそんな感じにの目がしっかりと開き、驚いたように氷室を見る
「え?!」
「起きたか」
「ええ?!」
ぎゅっと上着を抱きしめ、動揺しては辺りを見回した
いつのまにか車の中で、いつのまにか氷室がいる
「もう8時半だ
 君が教室で眠っていたから連れてかえってきた」
「は・・・8時半?!」
おたおたと、は記憶をたどる
やっと文化祭が終わって、やっと片付けが終わって、
誰もいなくなった教室で氷室への最後の報告日誌を書いていたのだ
そこまでて記憶は途切れてなくなっている
「疲れていたのだろうな、
呼び掛けに、がこちらを向いた
「よく頑張った」
途端にかぁっ、と
の顔が真っ赤になって、突然のことに氷室は驚いてを見た
「わ・・・わっ、あの・・・
 先生にそんな風に誉められたのって初めてかも〜〜〜」
赤い顔をしたまま、が言う
いつもの彼女からは考えられない程に動揺して、
でも口元はほころばせて、嬉しそうで
その様子に氷室は満足した
「君はよくやった」
「えへへ・・・」
照れたように笑ったに、氷室も微笑む
可愛い
本当に可愛い生徒だと、氷室は思って そして誇らしい気分でいっぱいになった
彼女が、自分のクラスの生徒で良かったと思う

それから、家に入っていったを見届けて氷室は車を出した
夜の道を走りながら、ふわり、と
もう一度氷室は微笑した
自慢の生徒を想って


「すやすや」
居眠り姫。姫描いてる時がいっちゃん楽しいってどーよ(笑)

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