放課後 (氷×主)


数学の小テストを採点しながら、氷室は溜め息をついた
50点以下が11人
まだ5月
たいしたことを教えていないこの時期に、ただの復習テストでこの点数
これでは先が不安だと、もう一度 その出来の悪い11人の答案用紙に目をやる
 
そうだ、この子も点数が悪い
他の先生からは、よくできる子だと聞いているのに
どうして数学に限ってできないのだろう
30点はひどすぎる
これでは私の教えたことのほとんどを理解していないということだ
(・・・・・・・・・)
また溜め息をついて、氷室は答案用紙を机に置いた
明日、補習だと言った時の 生徒達の顔が安易に想像できる

次の日、朝のS.H.Rの時間に氷室は 以下11名の名前を上げて補習を告げた
「えーーーっっ」
想像通りの反応
窓際のも、露骨に嫌そうな顔をして隣の女子と何か話している
「私の授業を普通に聞いていればこんな点は取れないはずだが?」
少しだけきつい口調で言うと、教室がシン・・・となった
まったく、
学生の本分を忘れ、簡単なテストもできないくせに文句だけは一人前
それが高校生というものだ、とわかってはいても頭が痛い
そもそも入試にパスしてここへ入ってきているのだから元からできない子達ではないものを
教室を見回して、氷室は溜め息をついた

放課後、隣のクラスの補習者を含めて20人で補習が始まった
「なぁ、ここわからんねんけど」
「えー、私にきかれても・・・」
ひととおり、授業のおさらいをして、問題用紙を配りとりあえず解けと指示を出し、氷室は生徒達の間を見て歩く
「ここに代入するん?」
「たぶん・・・・」
窓際の、自分の席にすわっているに、隣のクラスの問題児 姫条が何やら話し掛けているのが目立った
「・・・・・姫条、自分で解きなさい
 、教えなくていい」
「はぁーい」
の前の席にすわって、うしろを振り向いていた姫条が間延びした返事をして、前を向いた
「そこは、公式を使う」
手が止まっている生徒に言葉をかけながら、氷室はチラ、と窓際を見た
つまらなさそうに問題を解きながら 時々窓の外を見ているに 何かいい様のない気分になる
を受け持って1ヶ月が過ぎ、クラスのだいたいの生徒の性格などがつかめてきた今、明るくていつも笑っている印象の彼女が、こんな風につまらなさそうにしているのを見るのは気分がめいる
だいたい、他の授業はできるのに どうして数学だけができないのだ
嫌いな先生の授業はできないものと相場が決まっているものだが、
ということは、自分はに嫌われているということか

「なぁなぁ、ここは?」
「これは多分こう・・・・」
コソコソと、姫条に答えるに、氷室は小さく溜め息を付いた
自分が生徒に好かれるタイプの教師だとは思っていないが、担任している生徒に嫌われるのは気分のいいものではない
それが、自分ではお気に入りの生徒であったらなおのこと

それから2時間後、ようやく補習は終わった
「あーっ、一年分勉強したーっ」
「あはは、私も」
伸びをした姫条と、いつもの顔に戻ったが教室を一緒に出ていった
バイトばかりして勉強のサッパリできない姫条と、
不釣り合いだと思いながら、氷室はまた溜め息をついた
ああでも、の性格からして、ああいうタイプの方が気が合うのかもしれない
生徒達が出した答案を見ながら、氷室は苦笑した
みっちり教えればそこそこの点を取るのだ
も、
(根が文系なのかもしれないな・・・は)
それだったら、英語や歴史ができて数学ができないのもわかる
ひとり、うなずいて氷室も教室を出た
明日もまた、数学の授業がある


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