because (氷×主)


薄着になったの首元に、細いチェーンが目立ち、
ある時それが 義人の腕時計にひっかかった

「あ・・・っ」

痛い、と
悲鳴みたいに小さく声を上げたに、義人は驚いて右腕をの方へと戻した
の首からかけられているペンダント
それが、腕時計の金具とからまっている
「ごめん、じっとして」
「はい・・・」
華奢な白い首
少し力を加えたら折れそうだなんて思って、義人は苦笑した
そういう どこか不安定なところが、そそる
この少女
言われたとおりにじっと動かず、義人がペンダントを取ってくれるのを待ってる

「ここ、壊れちゃったね」
「義人さんの時計は・・・?」
「俺のは平気」
「なら、いいです」
の手に、銀のペンダントを乗せた
それをしてるのに気付いたのは、春になって薄着になってから
見るたびつけてるから、何か意味のあるものなんだろうと思った
服の中に目立たないように
まるでお守りみたいに
大切に隠してる、そんな感じ
「いいんです、もう外そうと思ってたから・・・」
「そう」
は、銀のペンダントをスカートのポケットに入れた
それを視界の端にとらえながら、席を立つ
何をしようとしていたんだったっけ

「ああ、そうだ、花だ、花」

電話の側のカタログ
取り上げて、ページをめくった
店に飾ってある花、あれの注文
月に1度カタログの中から好きなのを選んだら 業者が店に合ったアレンジをして持ってくるってやつ
「なんでもいいんだけど・・・」
つぶやいて、なんとなく涼し気な青い花を選んだ
花なんて、あればいい
何がどう、なんて思ったことはない
「義人さんは、好きな花ないんですか・・・?」
「好きな花ねぇ」
ピピ、
注文書を送信する音が、部屋に響いた
この部屋は今、とても静かだ

が憂いでいる

「特にないな」
「ひまわりは・・・?」
「ひまわり、悪くないね
 でも一途すぎて妬けるなぁ」
は、ひまわりが好きなんだろうか
一途って? と
首をかしげてみせたのを、愛しいと思った

そうだ、ひまわりは君に似てるかもしれない

痛々しいところが
届きもしない太陽ばかり、追い掛けているところが

こちらを見上げているに、手を伸ばした
頬に触れる
そのままくちづけた
まさか、本気になるとは思わなかった相手
誰かの代わりに、と求められて
そういうのも面白いかと、乗った
暇だった、だからつきあってもいいと思った
ゲームのようなものだ
高校生相手の、純愛ゲームみたいな

深く、唇を重ねた
震えるみたいにするが可愛い
同時に苦い想いが胸に広がる
いつまでもいつまでも、遠く誰かを求めている目
この腕に抱き締めて 髪にキスして
の求める誰かの代わりに、言葉を交わして想いを交わして
「義人さん・・・」
「ん?」
「・・・大好きです」
「俺も好きだよ」
の目が、揺れた
今にも泣き出しそうにして、それからうつむいて
「ごめんなさい」
「いいよ、」
震えるのを、抱きしめた

いいよ、と言うのは これが俺にとってゲームだからだ
本気じゃないから、傷つかない
そういう風に、思ってていい
これはただの暇つぶしで、気紛れで
だからは、何も罪悪感など感じることはない

「だから、謝らなくていい」

その髪を撫でた
深く傷ついた いくつも年下の少女
義人の知ってる女と比べたら本当にまだ子供で、弱くて傷つきやすくて
だからこそ、魅かれるんだろうか
硝子細工に、人が魅力を感じるように
こんなにも、本気になっていくんだろうか
堕ちる速度はゆるめられない
意志に関係なく、人は恋というものに嵌る

(まいったな)

義人は苦笑した
この結末は、見えているのに


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理