夢幻 (氷×主)


繰り返し繰り返し、あなたの夢をみます
心がぎゅっとなる、いつものあの夢です

ふ・・・、と
は雨の音に目をさました
いつものように、眠りが浅い
身体を縮めて、窓の外を見ると、少し開いた隙間から湿った匂いが流れてくる
ああ、今日も雨なんだ

毛布をたぐりよせるようにし、は小さく息を吐いた
朝、この時間はまだ寒い
一人凍えていたのを、あなたが見つけてくれたのも こんな寒い朝だったっけ

(洋平・・・・)
そっと、心の中で呼んでみた
その響きが好きで、はじめて会った時から名前を呼んだ
(ようへい・・・よーへい・・・)
目を閉じてみる
まだ寒かったけれど、ふわっと、
何かが包み込んでくれるような錯角に落ちていく
まどろみは、またを夢の中に引き戻そうと誘った
じんわりと、
熱くなっていくまぶたの裏、はもう一度眠りに落ちていく
そして夢は、繰り返される

いつも、夢の中で、は罪悪感でいっぱいだった
「ごめんなさい・・・」
大好きなあなたに言いたい
「ごめんなさい」
あなたの想いを確かめたかっただけなんです
伸びてくるいくつもの手
強くて、痛くて、切なくて、悲しくて
「私、何もわかってなかった・・・」
今どきの子は、なんて顔をしかめて言われるような
理解できない、と軽蔑の目で見られるような
そういう類だった、たぶん
たって、あんなに優しかったあなたを裏切ったから
あなたのこと、何もわかってなかったから

夢の中は、いつも狭い車内
自分から乗った、トモダチの車
知らない男もいて、みんな笑ってた
私だけが、泣いてた

「ごめんなさい、洋平」

例えば、私があなたを好きだと言って
あなたが私を好きだと言うとき
その重さは、どうやって計ったらいいんですか?
どっちが重いの?
ねぇ、本当に あなたは私が想う程、私のことを好きですか?

15才と、いくつもいくつも年上の人
もう大人だと背伸びしていた
だから、抱いてほしかった
愛されてる証が欲しかったから

「まだ早いだろ、もう少し大人になったらな  お姫さま」

笑って言ったあなた
それが優しさだなんて思えなかった
あなたは本当に、私を愛してくれてるの?

うとうと、と
浅い眠りを繰り返しながら はずっと雨の音を聞いていた
耳につく、嫌なおと
雨なんか大嫌い
あの日も雨が降ってた
あなたを、失った日

車内はどこか独特の雰囲気で
笑ってる男達が、卑猥に囁きながら私の身体に何度も触った
(ごめんなさい)
平気な顔をして
震えるのを我慢して
だけど涙だけ止められなかった
ねぇ、愛してるなら抱いて
あなたが触れてくれないから、私はオトモダチとココにいるんだよ

あなたを失った日
汚くなった私の身体
立てなくて、隠れるみたいに座ってたのを見つけてくれたのが嬉しかった
ごめんなさい
そんな風に心配してくれて
そんな風に走ってきてくれて
凍えてるのを見つけてくれて
私はあなたに愛されてたのに

「嫌だ・・・嘘だ・・・」

耳にまだ残るブレーキの音
それからうるさい程頭に響く 雨のおと
ザー、ザー、ザー
ああ、神様
あの人の想いを確かめた、これは卑怯な私への罰なんですか
身体は痛くて立てないのに
声だって掠れて出ないのに
こんなに汚れてしまったのに

「洋平・・・・・!!!」

雨の中、傘もささずに走ってきてくれたあなた
車道の向こう側
あなたは他に何も見えない程、必死に私を見ててくれたのに

神様、これが夢ならもう許して
あの人を返して
あの人を、返して

目覚めると、いつも吐き気に似た感覚が残る
雨の中、人が集まり出しても立てなかった自分
どこか夢の中にいるみたいに
呆然と目の前の光景を見ていた

洋平は死んだ
二度と目を開けなかった

ぶる、と
はベッドの中で身震いした
寒い
窓を閉めよう、と起き上がる
薄暗い空を見上げて、小さく息を吐いた
雨の音
耳障りなこの音が、大嫌い
冷たいだけの、まるで誰かの涙みたいな

は、うつむいて窓を閉めると、またベッドへと戻った
温かいぬくもりに、くるまれるよう毛布をたぐる
あなたは温かかった
夢の中だけでいいからせめて、抱いていてくれたらいいのに

そうしてまた、夢に戻る
悲しい最後が、繰り返される夢に


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